Aerosmith - Walk This Way (Audio)
1970年代中盤、エアロスミスの人気は日本で爆発する。
でも、それは、あくまでロックファンの間である。
そして、ロックファンの中でも、ミーハー的なファンが多かった。当時、ロックバンドをアイドルに仕立て上げ、発行部数を増やそうとした水上はる子率いるミュージックライフ誌はクイーン、キッス、エアロスミスを三大アイドルロックバンドとして、もてはやす。その影響だ。
一方、なかむらとうよう氏が率いるニューミュージックマガジンを熟読するアメリカンロックを愛するようなツウなロックファンは、あまり興味を持たないというか、持たないようにした。
ミュージックライフが応援するバンドは「女こどものバンド!」だという感じでとらえ、蔑んでいたからだ。
とはいえ、シンプルでポップなキッスはともかく、とんでもない高度な音楽性を有するクイーン、
そしてストーンズとヤードバーズの流れを組む粋なロックンロールを演奏するエアロスミスについては、ツウと呼ばれるうるさいロックファンも認めていく。
エアロスミスの評価は1977年の「Draw the line」で最高潮となるのだ。
ところで、初期の3枚については、日本での発売がかなり変則的であった事実を説明したい。
ちょっとしたウンチクである。
日本での発売はまず、2作目のアルバム「飛べ!エアロスミス(Get your wings)」が1975年5月21日。3作目「闇夜のヘヴィ・ロック(Toys in the attic)」が1975年7月21日、ファーストアルバム「野獣生誕(Aerosmith)」が1976年1月21日なのである。(アメリカではファーストアルバムが1973年、セカンドアルバムが1974年、サードアルバムが1975年発売。)
つまり日本では短期間の間に3枚の作品が発売された。それも、デビューアルバムが最後に発売されるというややこしい売り方である。
日本での人気の爆発の仕方を振り返ってみよう。まずラジオで3作目が猛烈にプッシュされ、3作目がヒットする。(2作目はそんなに評判にならなかった。)そして、「ドリームオン」が入っているため、1作目がついで売れるという流れだった。そして、1976年5月(これも間がない)4作目「ロックス」が大ヒットした。もう敵なしと言う感じである。
まあ、こんな細かいことはどうでもいいのかもしれないが、エアロを歴史的に検証しようとする人には参考になると思う。
前置きが長くなった。
「Walk this way」である。
この曲は日本で発表されたときは「お説教」というとてもとてもダサい日本語タイトルだった。
人気のある曲ではあったが、代表曲ではなかった。
ところが、1986年Run-D.M.Cがラップに合わせるタイプの曲で大ヒットすると、突然、エアロの代表曲になってしまう。
そして、長らく低迷していたエアロの復活の曲として有名になる。(このため、初期の曲ではなく、80年代の曲と誤解するファンもいる。)
このラッキーな事件?をきっかけにして、エアロは再飛翔する。
エアロは、1987年にボンジョビで有名なブルースフェアバーンをプロデューサーに迎え、外部ライターを使用したポップなイメージの「Permanent Vacation」を大ヒットさせる。そして、世界的な大スターとなってしまう。もうロックのフィールドではなく、音楽全般のフィールドで通用するスーパースターとなるのである。(と、同時に私は興味を失ってしまった。復活は嬉しかったけど、初期の荒々しさがなくなってしまったからだ。)
以後のスーパースターとしての立ち位置は今の若い人でも知っているところであろう。
それにしても、
Walk this way は個性的な曲である。リフにしろ、リズムにしろ、歌い方にしろ、すべてが斬新だった。
彼らは天才としか言いようがない。
スティーブンタイラーだけでなく、5人いたからこそ、このすごい楽曲が生まれたのだと思う。