1985〜1989年のフランクフルト駐在中、自分自身が実際の被害にあったことはないが、何回かジプシーの犯罪を目の前にしたことがある。まず、実行者はすべてジプシーの子供達であり、旅行者とのすれ違いざまにケチャップみたいなもの(時にアイスクリーム)を付けて、旅行者をびっくりさせる。付けられたことに気を取られている内に、別の子供が財布やバッグを奪い、それをすぐに別の仲間に投げて回す。どんどん回されるので、奪った子供を調べても追及しても、何も出てこないのである。こうなると証拠をつかまえようがない。
なぜ、子供が実行者かというと、警察に捕まったとしても、事情聴取だけで、未成年であるとして、すぐに釈放されるからである。人の話によると、朝に、ベンツの車に子供達を乗せて現場に行き、子供達が実行中、大人は陰で現場を見ているというウソのような話もある。ベンツが持てるほどいい商売ともいえる。
ある時は、市内のカウンターに来た日本人の旅行者が着席して、すぐ横にカバンを置いて手続きをしていたが、何とそのカバンが盗まれようとした。犯人は、一般客を装い、カウンターに近づき、手続きに夢中になって横に置かれていたバッグを奪ったのである。旅行者は全く警戒することなく、自分の横にバッグを置いていたが、手続きに集中していて、まさにそのスキをつかれたのである。係員が気付き、後を追いかけたため、バッグは放り投げて逃げていった。カウンターは、ビルの2階にあり、カウンター前にはほとんど人がいなかったが、そんな状況でも、このような事件は起きるものである。まさに油断大敵であった。