高校生の頃、「橋のない川」という映画を見たことがある。
白黒の映像が、最後に映し出された太陽が赤く燃えているのに、いいようのない感動を覚えた。
エタとか、そんな言葉を何度も反芻した。
人には、身分があって、士農工商と言われた時代があった。
職業の差別、人の身分に差別がなくなったとされた時代にも平民、などと、称された。
人の心に潜む他人への差別。
これは人が作り出し、再生産される人為のもの。
生まれ育ちに、とやかく言う人。気にする人は多い。
しかし、差別の材料とする者は、なんでもネタを探し出す。
いわれのないことでも、よくそんなことをと思えるような些細なことでも、差別は、優越感への表れ。
差別は、自身への慰め。
人間の弱さへの防御。
なので、無くなることはない。
無くならないことが、口惜しい。
日本の路地を旅する
上原善広
文春文庫
The River With No Bridge Trailer 橋のない川 予告編