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「格安のはずが割高」大阪市、1億4千万円の電気代拒否…結局1億1千万円支払いで和解
2021/11/16 10:19
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大阪市が電気代1億4000万円の支払いを拒んで電力小売会社から大阪地裁に提訴され、1億1000万円を支払うことで和解した。拒否した理由は「格安のはずが割高だったから」。5年前に電力が自由化され、料金を巡るトラブルは目立つ。国は契約時に内容の確認の徹底を求めている。(上村真也)
大阪市役所
市などによると、電力小売会社は東京の「エフパワー」(会社更生手続き中)。市は2017年4月までに市中央卸売市場など18施設の電気を購入する契約を結んだ。エフ社は自前の液化天然ガス(LNG)火力発電所を持ち、ニーズに合わせた格安な電気代が実現できるとうたっており、市は関西電力よりも割安になると見込んだという。
電気料金は使用電力に応じた「電力量料金」に、原油や為替などの価格を踏まえた「燃料費調整」(燃調)という指数を掛け合わせて算出される。燃調は大手電力会社ごとに異なり小売会社は大手の燃調を使うのが一般的だ。市とエフ社は契約時、関西電力の燃調を用いる条項を盛り込んだ。
エフ社の料金は17年4~7月は市の想定通り割安だったが、8月は15%増の約1億6900万円になったという。関電が燃調を引き上げたことが理由だ。
関電は原子力発電所の再稼働で経営が改善することを見越し、電力量料金を大幅に安くする一方、燃調は当時の原油価格の変動を踏まえて基準を変えたため引き上げとなった。関電の電気料金は全体として下がったが、エフ社は電力量料金を維持したため、燃調の引き上げだけが反映され、請求額が増えたという。
市は反発し、全ての契約が満了する18年11月までの総額約10億6000万円の請求に対し、9億2000万円しか支払わず、エフ社が昨年2月に提訴した。
訴訟でエフ社は、燃調に応じて請求額が変わるのは当然のことと主張。市側は、変更は想定されておらず、契約を結んだ17年4月時点の基準で算定すべきだと反論したが、地裁から今年8月に和解勧告を受けていた。和解は10月20日付。
市は取材に「主張が認められず、厳しい判決が予想されたため、和解勧告を受け入れた。今後は契約時に解釈の違いが出ないようにしたい」と答えている。
エフ社は自治体や企業向けに全国展開し、18年には契約電力が400万キロ・ワットに達して一時、新電力トップになった。しかし、昨冬に電力の確保が難しくなり、経営が悪化。今年3月、会社更生法の適用を申請し、東京地裁が手続き開始を決定した。