今週訂正したが、訂正前のオオバギを紹介している頁で、
「オオバギの方言名はチビククヤという。オオバギの葉が昔、雲子の後のお尻を拭くのに使われたことからきている名前。」と私は書いたが、今年(2008年)9月に、宜野湾市に住むTさんから「お尻を拭いたのはユーナ」との指摘があった。父や従姉の亭主に確認したところ、「そうである」とのこと。で、オオバギの頁は訂正した。
お尻を拭くのに使ったものは他に、サトウキビの葉を乾燥させて結び目を作ったものがあり、ウミンチュ(海人=漁師)はロープも使ったとのこと。
チビククヤの意味についてもTさんから情報があり、「お年寄りから聞いたところ、オオバギの葉でお尻を拭くとお尻の穴が固まるから」とのこと。これについては叔父に訊いてみた。「その通り」とのこと。さらに、『沖縄の都市緑化植物図鑑』に、オオバギの方言名としてチビカタマヤーガサともあった。尻の穴を固める幅の広い葉という意味だ。ということで、オオバギの葉でお尻を拭くとお尻の穴が固まるということから、オオバギの方言名がチビククヤとなった。ということで一件落着。・・・と思ったが、
オオバギは沖縄のどこでもよく見かける木で、昔から身近にあったはず。その木の名前が、お尻を拭くまで無かったということがどうにも解せない。オオバギはその葉に特徴がある。お尻を拭く前に見た目から名前が付くに違いないと思うのだ。それに、オオバギの葉には何度も触れた経験があるが、それに粘着性があったという記憶も無い。
で、実験してみた。実際にお尻を拭いてお尻の穴が固まると困るので、手の平で試してみた。手の平をオオバギで数回擦って、強く握ってみた。5分後、何の変化も無かった。オオバギの葉には感じられるほどの粘液は無い。もしかしたら葉の内 部にガジュマルのような粘液があるかもしれないと思って、オオバギの葉を強く絞り、僅かに出てきた液を手の平に塗り、同じく強く握ってみた。5分後、今回も変化は無かった。
お尻を拭くのに使ったユーナの葉、調べると、乾燥させてから使用したらしい。ということで、オオバギの葉とユーナの葉を乾燥させてみた。オオバギの葉は薄くて、生の時も破れやすかったが、乾燥させるとさらに破れやすくなった。揉むとボロボロになった。一方、ユーナの葉は乾燥させてもしっかりしている。揉んでも、葉脈の辺りで亀裂が入ったが、全体の形はしっかり残って、いかにも尻を拭く役に立ちそうであった。
以上のことから、私なりの結論。
オオバギは葉脈の形に特徴があるが、大雑把に見ればユーナの葉に似ている。ユーナの葉が近くに無ければ、オオバギの葉を代用したかもしれない。ところが、オオバギの葉は破れやすい。破れて手が雲子で汚れるということがあったに違いない。
そこで、オオバギの葉を、お尻を拭くのに使用させないために「オオバギの葉で尻を拭くと尻の穴が固まる」ということにし、チビククヤと名付けたのではなかろうか。「夜爪を切ると何たら」などと同じ、禁じるための方便ということである。
あるいは、オオバギの特徴ある葉脈の形、「尻の穴を縛ったような模様」から単純にチビククヤなのかもしれない。などと思うが、正確なところは不明。
記:ガジ丸 2008.11.15 →沖縄の生活目次
参考文献
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行