薬草研究家であるHさんから「薬草を表にしたものを老人クラブの仲間たちのために役に立てたい」と半年ほど前に依頼があり、Hさんからあれこれ薬草の資料をお借りしてさっそくその作業に取り掛かり、その後、他の年配の方々からあれこれ意見を取り入れ、あれこれ紆余曲折があって、約半年後の年明け1月になってやっと冊子が完成。
完成はしかし、「その1」であり、これから「その2」、「その3」と続く予定。取り敢えず完成した「その1」の内容は、「普通に食べて薬になるもの」、それを1冊、35ページほどの冊子にまとめた。普通に食べるということは普段食ということで、スーパーや八百屋に行けば普通に手に入るもの。あるいは、庭で育てることのできるもの。
タイトルが『薬になる野菜果物』となっているが、野菜と果物の線引きが曖昧であると私自身、自覚はしている。スイカが果物なら同じウリ科草本類のキュウリやカボチャ、トウガンも果物でいいのではないかと自分でも思う。学術的には、草本類に生る果実は野菜で、木本類に生る果実は果物ということになっているが、私の中では「ご飯のおかずになるものは野菜、甘くて、ご飯のおかずになりにくいものを果物」として分けている。
ニガウリは完熟すると外皮は黄色くなり、種を含む内部は赤くなり、食べると甘い。その甘さは果物といってもいいのだが、一般的には未熟果を使用する。なので野菜。バナナやパパイアは野菜としても果物としても扱われる。バナナもパパイアも品種によるが、未熟なものは甘くないので野菜として、熟したものは甘いので果物として扱われる。
薬になる野菜果物は多くあって、「こういうのが庭にあって、必要な時にすぐ手に入ると便利だな」と思って、「野菜は畑仕事をしないとできないが、果物なら放っておいても時期が来たら勝手に実が着くな」と、いつもの緩い考えで、先ずは果物から紹介。
スーパーや八百屋に行けば普通に手に入る果物。あるいは、庭で育てることのできる果物で、栄養価が高く、薬草を紹介する書籍に載っていたものから私が選んだのは、
アセロラ、イチゴ、イチジク、オリーブ、カキ、キウイ、グヮバ、ザクロ、シークヮーサー、シマグワ、スイカ、バナナ、パパイア、ビワ、ブドウ、マンゴー、レイシなど。
これらの内、(沖縄で)栽培しやすいものはアセロラ、グヮバ、ザクロ、シークヮーサー、バナナ、パパイア、ビワ、レイシなどがあり、アセロラ、グヮバ、ザクロ、シークヮーサー、ビワなどは民家の庭でよく見られ、よく結実する。ただ、アセロラは小鳥に食害されやすい。バナナ、パパイアは台風に弱い。レイシは高木になるので剪定管理が必要などといった弱点もある。それはおいといて、これらを果実として生食すると、
アセロラはビタミンCが豊富で、風邪予防・美肌に効果がある。
グヮバはビタミン、ミネラルが豊富で滋養保健に良い。
ザクロは摂取した場合の効能は不明、ただ、果汁が皮膚病に効く。
シークヮーサーはアセロラに同じ。
バナナは滋養保健・便秘に効果がある。
パパイアは滋養保健に良く、乳の出が良くなる。
ビワは疲労回復に良い。
レイシは滋養保健に良く、病後の回復に効く。
これらの中にはまた、食べる以外の方法でその他の効能もある。例えば、グヮバとビワはお茶としても有名で、いずれもその葉を乾燥させて煎じて服用すれば、グヮバは糖尿病・下痢止め・肩痛に効き、ビワは健胃・下痢止めになる。
その他、ザクロの果皮を乾燥させ、それを煎じた液はうがい薬となり扁桃炎・咳止めに効く。シークヮーサーの果皮は入浴剤として肩凝り・腰痛などに効き、煎じて飲めば咳止め・健胃になる。バナナの葉は止血に使え、パパイアの果汁は胃痛、下痢止めに効く。
家に庭があればこういった果樹を植えておいて、食べて楽しみ、お茶にして楽しみ、皮膚病にも使え、健康になる。オバー(お婆さん)がバナナの葉でケガした孫の手当てをしている日向の縁側、などといった古き良き時代の沖縄の民家の風景が思い浮かぶ。
記:2019.2.6 ガジ丸 →沖縄の飲食目次
参考文献
『沖縄薬草のききめ』多和田真淳著・発行
『身近な薬草活用手帖』寺林進監修、株式会社誠文堂新光社発行
『食べる野草と薬草』川原勝征著、株式会社南方新社発行
『琉球薬草誌』下地清吉著、琉球書房発行
『入門沖縄の薬草』吉川敏男著、ニライ社発行
『薬用植物大事典』田中孝治著、社団法人家の光協会発行
『薬になる植物図鑑』増田和夫監修、柏書房株式会社発行
『沖縄食材図鑑』田崎聡著、有限会社楽園計画発行
『うちなーの伝統野菜と食材』沖縄県中部農業改良普及センター発行
『おきなわ野の薬草ガイド』大滝百合子著、有限会社ボーダーインク発行
『ありんくりんぬちぐすい』金城勇徳著、株式会社週間レキオ社