カメムシ界代表
沖縄の動物を紹介するようになってもう14年ほどになるが、当然ながら(分母が大きいので)その内昆虫類が最も多く、既に300種を超えている。その多くは既に物覚えの悪い私の脳味噌から消えているが、有名どころはその姿と共に記憶にある。
物覚えの悪い脳味噌ではあるが、14年前から図鑑を見る機会が多くあったので、まだ出会ってもいない昆虫でも記憶に残っているものもある。図書館から借りる昆虫図鑑の全てに、昆虫だけでは無く身近な動物を紹介しているほとんどにも記載がある有名どころはたいてい覚えている。カメムシなんて世の中の美女たちに見向きもされないであろうが、ほとんどの図鑑に載っているアカギカメムシは、未遭遇だが私の記憶にあった。
アカギカメムシは『ふる里の動物たち』によると「アカギによくつくカメムシ」なのでその名がついているようだが、『沖縄昆虫野外観察図鑑』には寄主としてアカメガシワ、ウラジロアカメガシワ、オオバギ、カキバカンコノキとあり、アカギはなかった。
それでも、オオバギはアカギよりもさらに多く見られる樹木であり、アカメガシワもしばしば見かける樹木。たとえアカギが寄主でないとしても、それらが寄主であれば本種はどこにでもいるカメムシの種類と言える、はずだが、長く発見できなかった。
アカギカメムシはしかも、体長もカメムシの中では大きい方で、色も赤や橙や黄色だったりでよく目立ち、1本の寄主樹木に大量に発生するともあって、そこにいればすぐに気付くはず。しかも私は、虫の写真を撮ってやろうという意欲のあるオジサンだ。どうして有名で目立つ虫に遭遇できないのか、今から思えば不思議なことであった。
2018年12月、今住んでいるアパート、2階の私の部屋から階段を下りて1階の出口前、最後の階段の片隅に彼はいた。彼はしかし、既に死んでいた。
アカギカメムシ(赤木亀虫):半翅目の昆虫
カメムシ科 種子島以南、台湾、東南アジアに分布 方言名:フー
名前の由来は『ふる里の動物たち』に「アカギによくつくカメムシなので」とあった。ではあるが、『沖縄昆虫野外観察図鑑』に記載されている寄主はアカメガシワ、ウラジロアカメガシワ、オオバギ、カキバカンコノキとあり、アカギはなかった。
出現は周年。「寄主の葉上で集団を作ることがあり、8~10月には集団の個体数が多くなり、1本の寄主に1~2千個体も見られる」とある。であれば目立つはず。
やや大型のカメムシで体長19~26ミリ。体色は紅色から橙黄色まであり、背中には黄白色に囲まれた黒斑が数個ある。大きさも色も模様も目立つ。どこにでもいて、しかも大群になり、体長も大き目で色も目立つ。なのに長く発見できなかった。
「8~10月には集団の個体数が多くなり」の頃の体色は概ね橙黄色で、その前の7月頃、幼虫が産まれる頃の体色は橙赤色とのことで、さらに目立つようである。
「母虫は孵化まで抱卵し続け、口器から水分を出し卵塊表面を湿らせる。天敵(アリなど)の攻撃に対しては体で卵を覆い隠すか、臭気を放出して追放する。いわゆる子守虫としてよく知られる」と『沖縄昆虫野外観察図鑑』にあった。見上げた母である。
分布の種子島以南は奄美大島、沖縄島、石垣島、西表島となっている。
横から
仔虫
記:2019.3.17 ガジ丸 →沖縄の動物目次
参考文献
『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
『沖縄昆虫野外観察図鑑』東清二編著、(有)沖縄出版発行
『沖縄身近な生き物たち』知念盛俊著、沖縄時事出版発行
『名前といわれ昆虫図鑑』偕成社発行
『いちむし』アクアコーラル企画発行
『学研生物図鑑』本間三郎編、株式会社学習研究社発行
『昆虫の図鑑 採集と標本の作り方』福田春夫、他著、株式会社南方新社社発行
『琉球列島の鳴く虫たち』大城安弘著、鳴く虫会発行
『沖縄の生きものたち』沖縄生物教育研究会編著、発行