ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

マングース

2019年03月25日 | 動物:哺乳類

 素早い奴

 私が日常よく見かける野生の哺乳類は、多い順から並べると野猫、野犬、ネズミ類、オオコウモリ、そしてマングースとなる。野猫、野犬は、もちろん自身がまたはその親が元は人間のペットだったもの。その他、田舎へ行くと野生のヤギに出会うこともある。
 今住んでいるアパートは住宅街にあり、ネズミもオオコウモリもマングースも見かけることはないが、一昨年までやっていた畑へ行くと今でもそれらを見かけることがある。マングースは、散策に出かける公園でもよく見かける。

 過日、海辺の公園を散策していたら数十匹の蠅の集団に出会った。何だ?と見ると蠅は死骸に集っていた。何の死骸だ?と蠅を追っ払うとハブだった。ハブの死骸はたいてい頭が無いか潰されている。この死骸も頭がない。ハブ(かもしれない長いニョロニョロしたものも含め)を見つけたら頭を切れ、頭を潰せという掟があるらしいことは知っている。「これも見つけた人が切ったんだな」と、一旦は思ったのだが、
     
 そのハブの首から先の切れ方は引き千切ったか、噛み切ったかのような雑な切れ方で刃物で切った痕には見えない。で、「人が切ったのではないかも」と思い直す。「ならば犯人は何者だ?」と考えてすぐに思い浮かんだのがマングース。
 「動物虐待」の非難があったのか現在はやっていないみたいだが、私が若い頃までは沖縄の観光地で「ハブとマングースの決闘」なんて見世物があった。マングースの相手は、実際にはハブではなく同じく毒蛇のコブラであることが多かった。檻の中でコブラとマングースを闘わせる。マングースの反射神経はコブラに勝り、大抵はコブラはマングースにその首を噛まれ息絶えた。昔見たそんな光景を思い出した。

 マングース、畑仕事をしている頃は頻繁に(週に1度は)見かけていたが、私の畑にやってきて、目の前数m先にいたりすることもたびたびあったが、写真は撮れていない。手にカメラを持っている時でも、カメラの構える前にマングースは姿を消す。ハブより素早い奴は用心深い奴でもあり、のろまなオッサンにその姿を写されることはない。
 
 マングース(mongoose):野生の哺乳類
 ジャコウネコ科 沖縄では沖縄島にのみ分布 方言名:マングース
 名前の由来は資料が無く不明。mongooseは広辞苑にあり英語名のようだが、原産地での呼び名がそのまま英語名になり和名にもなったと思われる。
 1910年にハブの天敵動物として沖縄島へ移入、1979年には奄美大島へも移入される。体長は30~40センチ、体重500~900グラム。毛は灰褐色で尾は胴より長い。
 ハブ対策とはならず、むしろ農作物や養鶏農家への被害が多く、また、沖縄島北部まで生息地を広げ、ヤンバルの固有種への被害も出、現在は駆除対象生物となっている。

 『沖縄大百科事典』に「ふつうインドマングースをいう」とあったが、『沖縄の生きものたち』にはジャワマングースが記載されインドマングースは無い。『沖縄大百科事典』と『沖縄の生きものたち』のそれぞれの説明を要約すると以下。

 インドマングース(印度mongoose)
 以下、「」内の記述は『沖縄大百科事典』による。
 「四肢は短く胴と尾は長い。体長は30~40センチで雌は雄よりも一回り小さい」
 「通常は単独生活をし、繁殖期には雌雄一緒に行動することがある」
 「巣穴は岩の下、木の根元、山道の土堤などに作る」
 「一般的に昼行性で、サトウキビ畑や山道でよく見かける」
 「アラビア半島からパキスタン・インド・セイロン・ネパールなどにかけて分布」
 その他、沖縄では沖縄島にのみ分布。「1910年にハブの天敵動物としてインドから入れられ沖縄島に定着したが、ハブの天敵にはなっていない。」、「沖縄島の他に渡名喜島にも導入されたが、渡名喜島ではその後絶滅した。」とあった。
 サトウキビ畑の周辺でよく見られる。小型の鳥類、両性爬虫類、昆虫類を捕食。

 ジャワマングース(爪哇mongoose)
 頭胴長:雄30~36センチ、雌29~33センチ・・・以下略。

 ということであるが、ここでテーゲー(適当)人間の私も少し粘ってみる。
 念のためネットサイトのウィキペディアを見ると、そこにはインドもジャワもなくフイリマングースというのがあり、それが沖縄に移入された種とのこと。フイリマングースは「食肉目マングース科エジプトマングース属に分類される哺乳類の一種。かつてはジャワマングースの亜種として扱われていたこともある 」(ウィキペディア)とのこと。
 「かつてはジャワマングースの亜種」の「かつて」は最近(10年かそこら)のことのようで、私が参考にしている文献はどれも古いせいか、フイリマングースという名前はない。ということで、図書館へ行って新しい動物図鑑を探す。『奄美群島の外来生物』というのがあった。それにはちゃんとフイリマングースがあり、それによると、

 フイリマングース(斑入mongoose)
 「イラン~インド・中国南部の南アジア原産。」
 「全長60~70センチ、体重400~1000グラム。」
 「中型の食肉類。霜降り状の灰色の体色に覆われる。」
などとのこと。
 全長60~70センチはジャワマングースの「頭胴長:雄30~36センチ」の2倍ほどになるが、全長は尾の先までの長さを言うので、胴長と尾の長さが同じくらいということになる。「霜降り状の・・・体色」からフイリ(斑入り)と名が付くと思われる。

 記:2019.3.18 ガジ丸 →沖縄の動物目次

 参考文献
 『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄身近な生き物たち』知念盛俊著、沖縄時事出版発行
 『いちむし』アクアコーラル企画発行
 『学研生物図鑑』本間三郎編、株式会社学習研究社発行
 『沖縄身近な生き物たち』沖縄生物教育研究会編集発行
 『奄美群島の外来生物』鹿児島大学生物多様性研究会編、株式会社南方新社発行