ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

久々読書『宝島』

2019年05月03日 | 通信-文学・美術

 会社勤めをしてからは仕事関連、パソコン関連の本を読むことが増え、15年ほど前に沖縄の植物動物を紹介しようとホームページを始めてからはそれらに関する書籍や図鑑を開くことが主となって、文芸作品の読書は、はっきり覚えてはいないが、おそらくここ20年ほど無い。20年程前に何を読んだかも覚えていない。だいぶ前に断捨離で書籍類はほとんど処分したので確かめようもない。
 過日、友人のKYに「持っているけど、読む?」とメールがあって、そのタイトルを聞いて、その評判は前から聞いていて、沖縄が舞台であることも知っていたので「読む」と即答し、3月22日に借りて、その数日後から読み始める。久々の読書。
 読み始めてから3週間近く経った4月14日にやっと読み終えた。時間がかかったのは読書になれていないからというわけではなく、長時間読書に私の目、首、肩が耐えきれなくて読書時間が1日1~2時間だったのと、本が分厚かったという理由。
 分厚かった本、その内容に退屈してページを捲る手が鈍っていたということもまったく無い。主人公(4人いるがその内1人は早々に行方不明となり残る3人)たちの変化が興味を引く。「次どうなる?」と興味が沸き次のページ、次のページへとなる。
     

 涙腺の緩んだオジー(私)はまた、読んでいる時、数か所で目頭が熱くなる。悲しい女たち、悲しい子供たちが映像として浮かんできてウルウルする。1971年、ニクソンと佐藤による沖縄返還協定調印のことも作品に書かれているが、沖縄県民が望んだ「核抜き・本土並み」は全く裏切られ、本土復帰運動に希望を持って熱心に闘って来た人々にとっては祖国と思っていた日本国に裏切られたという思いで、絶望さえ感じたかもしれない。
 1969年の日米首脳会談で沖縄返還は決まったようだが、1971年に沖縄返還協定調印があり、1972年5月15日に沖縄は日本国となる。その間、
 1969年 毒ガス漏洩事件
 1970年 糸満轢殺事件
 1970年 コザ暴動
 1971年 毒ガス(主要成分はサリンやVXガス)島外撤去
などという出来事が沖縄で起こっていた。それらのことは本書『宝島』でも描かれ、物語全体の流れの中で重要なトピックとなっている。

 その頃私は中学から高校にかけての頃で、女のおっぱいが何よりの関心事であったというまだまだガキの頃、「祖国復帰」がどういう意味を持つのかしっかりとは認識していなかったと覚えている。デモにも参加したことなく、日の丸を掲げた覚えもない。私にとって復帰は「ドルから円になる」といった程度のお祭り気分だったと思う。
 私より上の世代、『宝島』の主人公の1人である「やまこ」のように復帰運動を熱心に闘ったきた人々にとって希求の本土復帰、希望の本土復帰であったはずなのに、不沈空母の役割を押し付けられたままの復帰となり、日本国に裏切られた、騙された、見捨てられたなどという想いが、おっぱいが何よりの関心事であったガキであった私にも伝わる。
 中には、「日本にとって俺たちは、遠い南の島の土人ということか?どうでもいい奴らということか?」と思った人もいたであろう。そんな悔しさが私にも伝わった。
     

 記:2019.4.25 島乃ガジ丸

 参考文献
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行