咥えタバコで
前回紹介したカワムラトガリバの頁でも書いたが、4月になると「写真に撮った草木や昆虫などの動物が何者であるか調べる作業」がだいぶ進んで、いくつか判明した。今回もその判明したものの1つで、同じく蛾の類のマダラツマキリヨトウ。
マダラツマキリヨトウはだいぶ前に写真に収めている。写真のプロパティを見ると2010年4月28日の撮影となっている。もう9年前のこと。ちゃんとは記憶していないが「そうであろう」と判断できたのはおそらく数年前だと思う。「に違いない」と確定し、その説明文(下の文章)を書いたのは最近の事。説明文は「間違ってはいけない」というプレッシャーがあるのでなかなか筆が進まない、いや、キーボードが進まない。
2010年4月28日、既に職場は時短となっていて私は週に2日だけの出勤、その他の日は親戚の土地を借りて30坪程度の畑仕事をやっていた頃だ。そして、この写真を撮った日の10日前に父が動けなくなり、その数日後に入院してバタバタしている頃。
従姉たちに手伝ってもらい、父の介護を交代でやって、病院駆けまわって、父の主治医に相談して、入院先を決めて、手続きして・・・など忙しくしていた頃。
28日は数少ない出勤日で、職場での3時休み、コーヒー飲んで一服している時、職場の庭を咥えタバコでブラブラしている時、これまで見たことのない大きな蛾に出会い、写真を撮っている。父のことで忙しくしていたのに、心に余裕はあったようだ。
マダラツマキリヨトウ(斑つまきり夜盗):鱗翅目の昆虫
ヤガ科 北海道~屋久島、台湾、インドなどに分布 方言名:ハベル(蝶蛾の総称)
名前の由来は資料が無く正確には不明。ヨトウについては広辞苑にヨトウガがあり、夜盗蛾と漢字表記され「幼虫は夜盗虫」とのこと。「夜盗虫」を引くと、「ヨトウガの類の幼虫・・・夜出て野菜類を食害する」とあり「夜、野菜を盗みに来る」といった意味であろう。マダラは、翅表が斑模様だからと思われる。ツマキリについては端切という漢字が思い浮かぶが、本種のどこのツマ(端)が切れているのか不明なので根拠無し。
前翅表に上から下へ何本もの白線が走っている。前脚に毛が多く生え太く見える。触覚も基部が太い(雄の触覚がそうらしい)などといったことが見た目の特徴。
前翅長14~15ミリ。食草はシダ類。出現は6~8月。全土で普通種とのこと。
最近から『原色昆虫大図鑑』も参考文献に加えたが、それによると「この類(おそらくヨトウガの類)は全てシダ類を食草とする」とのこと。上述の「雄の触覚の基部は太い」も同書による。『昆虫の図鑑 採集と標本の作り方』に載っている写真の本種は触覚が太くないので雌、私の写真は触覚が太いので雄だと思われる。
なお、『原色昆虫大図鑑』に「北海道~屋久島、・・・に分布」と沖縄は入っていなかったが、『昆虫の図鑑 採集と標本の作り方』には「全土に分布」とあった。
記:ガジ丸 2019.5.18 →沖縄の動物目次
参考文献
『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
『沖縄昆虫野外観察図鑑』東清二編著、(有)沖縄出版発行
『名前といわれ昆虫図鑑』偕成社発行
『いちむし』アクアコーラル企画発行
『学研生物図鑑』本間三郎編、株式会社学習研究社発行
『昆虫の図鑑 採集と標本の作り方』福田春夫、他著、株式会社南方新社社発行
『原色昆虫大図鑑』井上寛・岡野磨瑳郎・白木隆他著、株式会社北隆館発行