ヒバリではない
ヒバリはとても有名なので会いたいと思う。美空ひばりではない鳥のヒバリ。歌の女王美空ひばりももちろん、言うまでもなく有名。むしろ、美空ひばりからヒバリという名の鳥がいるのを知ったくらいなのだが、ブログで鳥を紹介するようになってから会いたいと思う一番の鳥である。しかし、会いたいと思って15年経っても会えていない。
今年の春、近所の公園で見知らぬ鳥を見つけ、写真を撮り、家に帰って鳥図鑑を開く。写真のものは、図鑑の中のビンズイという名の鳥に似ていた。ビンズイの隣の頁にはセジロタヒバリ、その次のページにはタヒバリが載っている。「ん?これはかねてから会いたいと願っていたヒバリの仲間か?」と少し期待が膨らむ。
図鑑の説明文を読んですぐに期待は萎む。ビンズイはセキレイ科で、ヒバリの頁を開くと、ヒバリはヒバリ科であった。残念。見た目は、大雑把に言えば似ているんだけど。
図鑑にタヒバリと名の付く鳥は5種あり、同じ仲間なのにビンズイだけタヒバリとは全く異なる名前であるというのも面白いが、ヒバリではないというガッカリ感が強く、しばらく、ボーっとしてしまった。パソコンの見過ぎで目が疲れたという理由もあるが。
ビンズイ(便追):スズメ目の冬鳥
スズメ目セキレイ科の冬鳥 全長15.5センチ 方言名:不詳
名前の由来は資料が無く不明。漢字表記の便追は『野鳥ガイドブック』にあった。「便りを追う」から来ているのなら「恋人の鳴き声を追う」と考えられ何か切ない感じ、「便を追う」であれば、雌が便をすると雄はその後を追うというという肉体的欲求の感じ。
「大きさや形はタヒバリに似るが体の色は緑色味が強く・・・」とあり、同図鑑のタヒバリを見ると、確かに似ている。本種は「耳羽後方の白い斑紋と、下面の黒いすじは太くてはっきりしている。」とのことで、写真のものを本種と判断する。
平野、海岸の松林や広葉樹林などを好んで生息する。地上を歩いて餌をとり、木の枝にもよく止まる。県内では冬季に見られ小群の場合が多い。見られる時期は9~3月。
鳴き声、地鳴きはヅィー、さえずりにはチッチッという音が入る。本種と近い仲間は『沖縄の野鳥』に数種紹介されている。私はまだそのどれも見たことが無いが、以下にそれらの概要を紹介しておく。ちなみに、ヒバリはヒバリ科、タヒバリ類はセキレイ科。
振り向くビンズイ
タヒバリ(田雲雀):スズメ目の冬鳥
セキレイ科の冬鳥 全長16センチ 方言名:不詳
冬羽は、「上面がオリーブっぽい褐色、下面は汚れた白色を呈し、胸から腋に黒い縦紋
ビンズイやムネアカタヒバリによく似ている」とのこと。
川岸や水田などの草地に生息。鳴き声は、チー、ピィーッ、ピィー。
沖縄で見られる時期は9月から3月。
ムネアカタヒバリ(胸赤田雲雀):スズメ目の冬鳥
セキレイ科の冬鳥 全長15センチ 方言名:不詳
冬羽は、背面に緑色味があり、黒褐色の縦班がある。
県内には初冬に小群で渡来し、草地などで越冬する、飛来数は比較的多い。
水田、農耕地、牧草地などに生息。鳴き声はチィー、またはツィー
沖縄で見られる時期は9月から5月。
マミジロタヒバリ(眉白田雲雀):スズメ目の冬鳥
セキレイ科の冬鳥 全長18センチ 方言名:不詳
体の上面が黄褐色、眉斑は灰白色で、下面は黄白色、足は黄褐色。
尾が長い、後ろ指の爪が長い。
牧草地や農耕地に生息。鳴き声は、飛びながらビュン、ビュン。
圏内には定期的に飛来するが、数は少ない。沖縄で見られる時期は10月から3月。
セジロタヒバリ(背白田雲雀):スズメ目の冬鳥
セキレイ科の迷鳥 全長14センチ 方言名:不詳
冬羽はムネアカタヒバリとそっくりで、両者の識別は困難とのこと。
農耕地などの開けた場所に生息。
沖縄で見られる時期は11月から2月。沖縄への渡来記録は稀とのこと、
マキバタヒバリ(まきば雲雀):スズメ目の冬鳥
セキレイ科の迷鳥 全長14センチ 方言名:不詳
タヒバリに似ているが、肩羽の縦班がより鮮明である。
農耕地などの開けた場所に生息。鳴き声はピッ、ピッ、またはチュイッ
沖縄で見られる時期は11月から3月。全国的に渡来記録は少なく、県内でも少ない。
記:2017.7.15 ガジ丸 →沖縄の動物目次
参考文献
『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
『沖縄の野鳥』沖縄野鳥研究会編、(株)新報出版発行
『いちむし』アクアコーラル企画発行
『検索入門 野鳥の図鑑』中村登流著、株式会社保育社発行
『野鳥ガイド』唐沢孝一著、株式会社新星出版社発行