故ジャニー喜多川氏の性加害に対する国連の調査が一応終了して、中間報告的な会見が行われた。
会見では、被害が「ジャニーズ事務所のタレント数百人に及ぶ疑いがある」、「加害者に対する透明性ある捜査の確保、被害者への謝罪や金銭的補償が不十分」、「(被害者の救済には)国連の指針に基づき日本政府が義務を負う必要性がある」と述べたと報じられている。
喜多川氏による所属タレントへの性加害はあったのだろうし、ジャニーズ事務所が立ち上げた「再発防止特別チームの調査」についても「透明性や正当性に疑念が残る」ものであるかもしれないが、会見内容に関しては眉唾・針小棒大と眺めるべきように思う。
調査したのは国連人権理事会の「ビジネスと人権作業部会」のダミロラ・オラウィ議長と専門家(?)のピチャモン・イェオパントン氏の2人であるが、会見で舌鋒鋭く糾弾したのは女性のイェオパントン氏であった。
国連人権理事会は2006年に国連人権委員会を発展・改組した組織であり、前身の人権委員会時に出されたクマラスワミ報告が「半島出身慰安婦を性奴隷と定義し日本の国家的関与を認定した」ことに示されるように、人権救済という錦旗の下にセンセーショナルに考察・報告するのが常であるように思える。
そんな背景を下敷きにして今回の会見を眺めると、既に被害者数を「数百人」と表現しているように諸事には聊かに誇大に過ぎるのではないだろうか。ジャニーズ事務所所属の男性タレントが述べ何人であるのか知らないが、数百人の被害者がいればもっと早く悪行が露見したであろうし、喜多川氏もオットセイ並みの精力が無ければ達成できない数字であるように思える。
また、国家的な関与や捜査に手心が加えられた痕跡を明らかにすることなく「政府による被害者救済」を唐突に述べることにも疑念を持つべきではないだろうか。
今回の調査は、国連人権理事会の最終報告・勧告のための審議資料の収集とされているが、国として明確に反論しなかったことでクマラスワミ報告が国際常識となって独り歩きした過去を教訓として、今回の中間報告に対して政府は、捜査に手心を加えなかった事実や被害者に対する金銭的補償が国家賠償の範疇外であることを早期に・明確に主張すべきであると思う。
適時・適切・かつ相応に対応しなければ、イェオパントン報告が意実と独り歩きして、歴史は「過去の日本には数百人を凌辱した世界的にも稀有な稀代の色魔が存在したが、政府は頬被りに終始した」とするに違いない。
国連人権理事会の人権擁護勧告は、弱腰の文明国に向けられるのが常で、中国のウイグル抑圧やロシアのウクライナ人拉致などについては、非難さえできないでいる。
政府はお得意の「遺憾砲」くらいは撃つであろうが、遺憾弾がイェオパントン氏にまで届くとは思えない。