産経新聞に寄稿された麗澤大学客員教授の飯山陽氏の記事で、記憶しておくべき数字を教えられたので忘備録的に書き留めておくことにした。
フランス国立統計経済研究所(INSEE)が今年(2023年)3月に発表したデータで《フランスの総人口6,760万人のうち、移民1世10.3%、移民2世10.9%、移民3世10.2%となっており、既に国民の1/3が移民系である。また、2020年にイスラム系移民を対象とした「フランス法とイスラム法のどちらを優先するか」と云う世論調査でイスラム法を優先すると回答したのは、35歳以上25%、25~34歳42%であるのに対して25歳未満では74%にも達する》とされていた。
教授は《イスラム法は男女平等や人権においてキリスト教国や西側自由主義諸国とは大きく異なっており、既にフランスはキリスト教的価値観を共有する国とは呼べない現状》となっているとし、その原因は《フランスで生まれたフランス人である若い移民ほどイスラム的価値観を尊重する度合いが高いことは、移民も世代を経れば同化するだろうという楽観論が裏切られた》結果であるとし、さらに《同化しないイスラム・コミュニティに依る地域文化の破壊が顕著となった10年前にはメルケル首相(独)やキャメロン首相(英)は既に移民政策の失敗を認めているが、最近ではイタリア・オーストリア・スイス・デンマーク指導者も移民政策の変更を余儀なくされている。》と論を次いでおられる。
ヨーロッパ諸国はキリスト教的博愛・人道主義に基づいて移民を寛容に受け入れたが、その移民で固有文化が侵されるという「軒を貸して母屋を盗られる」以上に、イスラムテロに怯える状態になっている。それに伴って各国では移民排斥の風潮が高まり国粋主義政党に議席を与えるという状況になっているが、移民の割合が1/3近いフランスでは遅かれ早かれイスラム政党が議席・発言権を持つ日が来ることだろう。そうなれば、イスラムが忌避する偶像崇拝の象徴としてルーヴル美術館の名画が収蔵庫に納い込まれるのもあり得ない話ではないように思える。
日本でも、開明的な博愛主義者がシリア難民などに関してヨーロッパ並みの受け入れを主張していたが、今にして思えば「政府の不作為の功績」と呼んでも良い様に思える。しかしながら、労働力確保のために移民や在留枠を拡大しようとする現在の動き、「移民も世代を経れば同化するだろうという楽観論」によって「母屋を盗られない制度設計」であって欲しいものである。