面白いと書けば顰蹙を買うだろうが、ユニークな学説を知った。
産経新聞「正論」欄で、東京国際大学の村井友秀特命教授が引用しているフランス社会学者のブートゥールの学説(我流で抄訳)《飢饉で何も対策しなければ、弱者(女子供)が死に強者(男)が生き残るので構成員間での再生産能力が失われて集団は消滅する。そうならないためには、女子供は生き残って男が死ぬことが必要となるので、種の生存本能が働いて男が先に死ぬ手段として戦争は起きる》というものである。
何時頃唱えられた学説であろうかと「ブートゥール」と検索したが見つけられなかったが、おそらく「戦争は男が行なうもので、その場合も非戦闘員は殺さない」という騎士道精神の一片が残るとともに、爆撃機等による非戦闘地域への無差別攻撃などが無かった第一次世界大戦以前であろうが、大量殺りく兵器が支配している現状では書架の説と捉えるべきかも知れない。
しかしながら、かってフツ族とツチ族が主導権争いを演じたルワンダ内戦では、相手の男と子供は殺し女は生殖・育児の機能を奪った後に労働力として生かす蛮行が行なわれたと記憶しているので、ブートゥール学説と意味を同じくする行為は現代でも続いているのかも知れないし、ウイグル自治区ではウイグル女性に対する不妊手術などの噂も囁かれる。
また、教授は「飢餓」をストレスと読むことで政治的・経済的な欲求にまで領域をを拡大して「戦争原因」と論を次ぎ、《近代以前の戦争は「物取り・人取り」であり、特に植民地獲得のための戦争は大きな経済的利益をもたらしたものの、現代戦では膨大な戦費に見合う経済的利益を得ることは無く、目に見えない政治的利益の追求に尽きるともされている。
教授は論の冒頭《人類は3千年で1万回以上の戦争を経験したきた》とも書かれているが、戦争に至らない地域紛争や小競り合いを含めれば更にその回数は増えることだろうし、命を奪われた人の数は推計すら困難な膨大なものであろう。