集団的自衛権発動要件についての議論が喧しい。しかしながら、発動要件の細部まで規定することは、運用面での硬直性と時間的制約となり効果的な自衛権の行使を困難にすると考える。なぜなら、想定外の状況が生起した場合、行使の適否を議論する「小田原評定」に貴重な時間を浪費してしまうことが予想されるからである。
そのような事態を防ぐことができるのが事象生起ごとに最高指揮官から派遣部隊指揮官に示される《ROE(交戦規程)》である。派遣部隊に武力使用の限界と範囲を明確に示すことによって、武力を政治がコントロールする方法として先進国で執られている方法である。かって、不拡大の政府方針に対して関東軍が暴走して満州事変を引き起こした経緯から、ROEを危ぶむ向きもある。その抑止として必要不可欠なのが、列国では常識の軍刑法と軍事法廷の制度である。現在の刑法では暴走した指揮官に対して「殺人教唆」、実行者に「業務上過失致死罪」程度の罪過しか課し得ない。もちろん現在の自衛官は「罪状の軽重によって」自己の行動を左右するような愚かな隊員はいないことを確信しての提言であるが。
ROE、軍刑法及び軍事法廷設置が、シビリアンコントロール(軍事を政治が制御)を完璧にするためにも必要なことと考えるが如何。