福祉サービスの利用者に原則1割の自己負担を求める障害者自立支援法は憲法違反だとして、藤沢町新沼の佐々木亮さん(39)が国などを相手取り、負担免除などを求めた行政訴訟は16日、盛岡地裁で和解が成立する。同様の訴訟は全国14地裁で起こされたが、法を廃止し、国に責任があったとする基本合意が1月、国と原告団との間で締結されたのを受け、和解が相次いでいる。和解では、基本合意を確認し、原告が施設利用料などにかかわる損害賠償請求権を放棄する。
奥州市水沢区に住む原告の父直人さん(77)は「うちの子はドライブが好きでね。盛岡や仙台に行くと喜ぶんですよ」と話す。亮さんは1歳で脳性まひになり、重度の知的障害になった。中学卒業後、藤沢町の障害者施設に入所しているが月1度、家族と過ごす。
だが、年金生活は裕福ではない。亮さんの月々の収入も障害基礎年金の約8万3000円だけで、息子の生活費の多くは夫婦の年金から工面してきた。そこに2006年4月の障害者自立支援法施行が直撃し、亮さんの障害者施設の利用料、水道光熱費、食事代で約5万円の負担増になった。
「息子のささやかな楽しみのために家族の多大な支援が必要になった。私たち夫婦が死んだら息子はどうなるか……」。そんな不安の中で提訴しただけに、同法の廃止が決まったうれしさは大きかった。
ただ、政府は依然、同法に代わる今後の政策を示していない。直人さんも「和解は始まりに過ぎない。障害者が幸せな暮らしを送れるようになるまで、福祉制度改革を政府に訴え続ける」と話している。
一方、県内の障害者施設でも今回の和解を歓迎している。沿岸部のある施設では、施設での作業で得る工賃と障害基礎年金の合計が10万円以下という通所者が多い。施設利用料や昼食代、家賃、光熱費などを支払えば、障害者の手元にはほとんど残らない。同施設の男性管理者(49)は「働く意欲のある人に施設利用料を支払わせてきたこれまでの制度は間違っていたと、やっと国が認めてくれた」と喜んでいる。
(2010年4月16日 読売新聞)
奥州市水沢区に住む原告の父直人さん(77)は「うちの子はドライブが好きでね。盛岡や仙台に行くと喜ぶんですよ」と話す。亮さんは1歳で脳性まひになり、重度の知的障害になった。中学卒業後、藤沢町の障害者施設に入所しているが月1度、家族と過ごす。
だが、年金生活は裕福ではない。亮さんの月々の収入も障害基礎年金の約8万3000円だけで、息子の生活費の多くは夫婦の年金から工面してきた。そこに2006年4月の障害者自立支援法施行が直撃し、亮さんの障害者施設の利用料、水道光熱費、食事代で約5万円の負担増になった。
「息子のささやかな楽しみのために家族の多大な支援が必要になった。私たち夫婦が死んだら息子はどうなるか……」。そんな不安の中で提訴しただけに、同法の廃止が決まったうれしさは大きかった。
ただ、政府は依然、同法に代わる今後の政策を示していない。直人さんも「和解は始まりに過ぎない。障害者が幸せな暮らしを送れるようになるまで、福祉制度改革を政府に訴え続ける」と話している。
一方、県内の障害者施設でも今回の和解を歓迎している。沿岸部のある施設では、施設での作業で得る工賃と障害基礎年金の合計が10万円以下という通所者が多い。施設利用料や昼食代、家賃、光熱費などを支払えば、障害者の手元にはほとんど残らない。同施設の男性管理者(49)は「働く意欲のある人に施設利用料を支払わせてきたこれまでの制度は間違っていたと、やっと国が認めてくれた」と喜んでいる。
(2010年4月16日 読売新聞)