ボトン。車椅子の上から投げた「ボッチャ」のボールが、鈍い音を響かせて体育館の床に転がると、ジャックボール(目標玉)の近くで止まった。瞬間、障害者たちが集う「ピースサンシャイン」(ピーシャン)=さいたま市北区、山口詩子代表=のメンバーの笑顔がはじけた―。
ピーシャンは2008年、同区の社会福祉法人「いーはとーぶ」(西尾工理事長)の利用者のサークル活動から生まれた。発足時は、独立行政法人福祉医療機構の助成事業だったが、1年後に、障害者自立支援法の生活介護事業に移行した。ボッチャは、脳性まひなどで体に障害があるメンバーが、自分たちで考えた活動企画の一つだ。
元養護学校(現・特別支援学校)教諭でメンバーとして活動にかかわり、同法人のパート職員になった今もリーダー的存在の笠原健一さん(32)は「障害者自らが主体的に活動を行う」ことが、ピーシャンの柱だと語る。「地域や身近な人の役に立つことで、仲間の輪を広げ、自分を磨いていく」、そんな思いが発足のきっかけになった。
活動は、市内の相談支援センターで、ピーシャンのような〝場〟を必要としている人を紹介してもらうことから始めた。訪問後の礼状書きまで一から始める状態だったが、話し合いながら進めた。やがてイラストや詩、パソコンなど、それぞれの〝できること〟を伸ばしながら、だれもが活動に参加できるシステムが出来上がった。
企画は、脳腫瘍(しゅよう)という病気と向き合いながら活動する笠原さんや、メンバーが生きることについて力強く語る講演会を小学校で開いたり、カレー作りや地域のイベントに参加したりと徐々に広げた。
金田宏人さん(30)は、鳩ケ谷市内の小学校での講演会が忘れられない。「最後にオリジナルの〝ピーシャンの歌〟を仲間と歌ったら好評で、また来てくれないかと言われた。次に訪ねた時は、子どもたちが歌を一緒に口ずさんでくれた」と話す。
37歳の男性利用者は、当初は消極的だったが、今ではピーシャンに溶け込んでいる。パソコン技術でも引っ張りだこだ。「北区区民まつりでオリジナル封筒を売るなど、人とかかわることで生活に張りが出た」と、笑みがこぼれた。
浜尾武さん(37)はイラストの才能を活かし、地元商店の屋号を描いた。今後につなげたいという。
嶋谷伸一郎さん(34)は「家で小説を書いていたが、ピーシャンで生活の場が増え、自分の可能性が広がった」という。月に1度のボッチャは嶋谷さんの発案。榎本江里さんが初めてチャレンジしたボッチャを見守っていた。
ピーシャンの扉は、さまざまな障害のある仲間が自由に集う心地よい〝たまり場〟として、今日も開いている。
問い合わせは、いーはとーぶ(048・662・5800)。
埼玉新聞
ピーシャンは2008年、同区の社会福祉法人「いーはとーぶ」(西尾工理事長)の利用者のサークル活動から生まれた。発足時は、独立行政法人福祉医療機構の助成事業だったが、1年後に、障害者自立支援法の生活介護事業に移行した。ボッチャは、脳性まひなどで体に障害があるメンバーが、自分たちで考えた活動企画の一つだ。
元養護学校(現・特別支援学校)教諭でメンバーとして活動にかかわり、同法人のパート職員になった今もリーダー的存在の笠原健一さん(32)は「障害者自らが主体的に活動を行う」ことが、ピーシャンの柱だと語る。「地域や身近な人の役に立つことで、仲間の輪を広げ、自分を磨いていく」、そんな思いが発足のきっかけになった。
活動は、市内の相談支援センターで、ピーシャンのような〝場〟を必要としている人を紹介してもらうことから始めた。訪問後の礼状書きまで一から始める状態だったが、話し合いながら進めた。やがてイラストや詩、パソコンなど、それぞれの〝できること〟を伸ばしながら、だれもが活動に参加できるシステムが出来上がった。
企画は、脳腫瘍(しゅよう)という病気と向き合いながら活動する笠原さんや、メンバーが生きることについて力強く語る講演会を小学校で開いたり、カレー作りや地域のイベントに参加したりと徐々に広げた。
金田宏人さん(30)は、鳩ケ谷市内の小学校での講演会が忘れられない。「最後にオリジナルの〝ピーシャンの歌〟を仲間と歌ったら好評で、また来てくれないかと言われた。次に訪ねた時は、子どもたちが歌を一緒に口ずさんでくれた」と話す。
37歳の男性利用者は、当初は消極的だったが、今ではピーシャンに溶け込んでいる。パソコン技術でも引っ張りだこだ。「北区区民まつりでオリジナル封筒を売るなど、人とかかわることで生活に張りが出た」と、笑みがこぼれた。
浜尾武さん(37)はイラストの才能を活かし、地元商店の屋号を描いた。今後につなげたいという。
嶋谷伸一郎さん(34)は「家で小説を書いていたが、ピーシャンで生活の場が増え、自分の可能性が広がった」という。月に1度のボッチャは嶋谷さんの発案。榎本江里さんが初めてチャレンジしたボッチャを見守っていた。
ピーシャンの扉は、さまざまな障害のある仲間が自由に集う心地よい〝たまり場〟として、今日も開いている。
問い合わせは、いーはとーぶ(048・662・5800)。
埼玉新聞