清掃始め2年 不法投棄が激減
東名高速道路の高架下で、御殿場市や裾野市、小山町の作業所に通う障害者たちが2年前から地道な清掃作業を続けている。作業開始後間もなく、御殿場市竈(かまど)の高架下に、施設利用者たちが制作した富士山のちぎり絵を飾ったところ、それまで悩まされていた布団や空き缶などの不法投棄物が大幅に減り、その状態が今も続いている。清掃の委託元は「思わぬ効果でうれしい驚き」としている。(寺島真
11月29日午前、社会福祉法人「ステップ・ワン」(御殿場市)の利用者11人と職員5人が、小さなカゴや軍手、カマを手に、御殿場市竈の敷地(約1000平方メートル)に入って作業を始めた。知的障害などがある利用者たちは、指示がなくても役割分担し、手際よく手で草を抜いたり、集められた草をトラックに運んだりする作業を進めた。
作業は、中日本高速道路東京支社が障害者の就労支援のため、2市1町の障害者作業所に委託したもので、東名高架下2~4か所で、2009年秋から年1~4回行われている。
ステップ・ワンの根上豊子理事長によると、作業を始めた時には、布団や空き瓶、傘などの不法投棄物が軽トラック1台分もあったが、絵を飾ってからは目に見えて減っていったという。
作業を発注する同支社御殿場保全・サービスセンターの鈴木智之・保全担当課長は「不法投棄が減ったのはあの絵のおかげ」と、側道と高架下を仕切るフェンスに飾られている富士山のちぎり絵に目を向ける。
絵は、09年秋に開催された県芸術祭への出展のため、ステップ・ワンの利用者全員で制作したもので、芸術祭が終わった後、作業所の玄関に掲出していた。
この絵に気づいた鈴木課長が「作業所に飾るだけではもったいない。せめて人目に触れるところに」と、高架下に飾ることを提案。以来、絵が傷まないようにビニールで表面を覆い、同じ場所に飾り続けている。
鈴木課長は「不法投棄がほとんどなくなったのは、絵が人の良心に働きかけるのかもしれない」と推測する。「絵がきれいだから」と高架下を散歩コースにしている住民もいるという。
ほか3か所の高架下にも、障害者が描いた絵や、清掃作業の様子を写した写真が飾られており、同様に不法投棄や落書きがほとんどなくなったという。
ステップ・ワンの根上理事長は「外に出て作業する喜びに加え、自分たちの絵が人目に触れる機会にもなる。しかも不法投棄がなくなるなんて何よりです」と笑顔を見せている。
作業現場に飾られた「ステップ・ワン」の利用者が描いた切り絵(11月29日午前11時13分、御殿場市竈で)
(2011年12月3日 読売新聞)
東名高速道路の高架下で、御殿場市や裾野市、小山町の作業所に通う障害者たちが2年前から地道な清掃作業を続けている。作業開始後間もなく、御殿場市竈(かまど)の高架下に、施設利用者たちが制作した富士山のちぎり絵を飾ったところ、それまで悩まされていた布団や空き缶などの不法投棄物が大幅に減り、その状態が今も続いている。清掃の委託元は「思わぬ効果でうれしい驚き」としている。(寺島真
11月29日午前、社会福祉法人「ステップ・ワン」(御殿場市)の利用者11人と職員5人が、小さなカゴや軍手、カマを手に、御殿場市竈の敷地(約1000平方メートル)に入って作業を始めた。知的障害などがある利用者たちは、指示がなくても役割分担し、手際よく手で草を抜いたり、集められた草をトラックに運んだりする作業を進めた。
作業は、中日本高速道路東京支社が障害者の就労支援のため、2市1町の障害者作業所に委託したもので、東名高架下2~4か所で、2009年秋から年1~4回行われている。
ステップ・ワンの根上豊子理事長によると、作業を始めた時には、布団や空き瓶、傘などの不法投棄物が軽トラック1台分もあったが、絵を飾ってからは目に見えて減っていったという。
作業を発注する同支社御殿場保全・サービスセンターの鈴木智之・保全担当課長は「不法投棄が減ったのはあの絵のおかげ」と、側道と高架下を仕切るフェンスに飾られている富士山のちぎり絵に目を向ける。
絵は、09年秋に開催された県芸術祭への出展のため、ステップ・ワンの利用者全員で制作したもので、芸術祭が終わった後、作業所の玄関に掲出していた。
この絵に気づいた鈴木課長が「作業所に飾るだけではもったいない。せめて人目に触れるところに」と、高架下に飾ることを提案。以来、絵が傷まないようにビニールで表面を覆い、同じ場所に飾り続けている。
鈴木課長は「不法投棄がほとんどなくなったのは、絵が人の良心に働きかけるのかもしれない」と推測する。「絵がきれいだから」と高架下を散歩コースにしている住民もいるという。
ほか3か所の高架下にも、障害者が描いた絵や、清掃作業の様子を写した写真が飾られており、同様に不法投棄や落書きがほとんどなくなったという。
ステップ・ワンの根上理事長は「外に出て作業する喜びに加え、自分たちの絵が人目に触れる機会にもなる。しかも不法投棄がなくなるなんて何よりです」と笑顔を見せている。
作業現場に飾られた「ステップ・ワン」の利用者が描いた切り絵(11月29日午前11時13分、御殿場市竈で)
(2011年12月3日 読売新聞)