◎障害者と共に再生へ
東日本大震災の津波で拠点施設を失った。気仙沼市で障害者の自立支援事業に取り組むNPO法人「ネットワークオレンジ」の代表理事、小野寺美厚(みこ)さん(42)。震災のわずか12日後、自宅で子どものデイサービスなどを再開した。「活動を始めることが、お世話になった地域への恩返しになる」。突き動かしたのは強い使命感。「人が元気なら必ずまちは再生できる」(3月26日付)
市役所から徒歩で約2分。ビルの1階に、今の活動拠点「三日町オレンジ」がある。
障害者が働く駄菓子屋、誰でも立ち寄れるコミュニティーカフェ、アート創作スペース…。今月23日に始めた「歳末縁日」(28日まで)では、ヒーローショーやギターコンサートなどを企画した。
24日、駄菓子やおもちゃを買いに来た子どもたちに笑顔で声を掛ける小野寺さんの姿があった。「お楽しみくじを引いてみる? 何が当たるかな?」。子どもからお年寄りまでの楽しそうな声が響く。
震災後、ぼろぼろになった施設を見て言葉を失った。知的障害のある子ども向けのデイサービス施設と、18歳以上の若者の就労を支援する駄菓子屋。市内にあった二つの活動拠点は、津波で見る影もなくなった。
行動は早かった。3月23日に自宅の居間などでデイサービスと就労支援を始めたのに続き、6月には活動の中心を「三日町オレンジ」に移した。
支援物資の配布にも取り組んだ。NPOや企業関係者に電話し、国内外から食料や衣類を集めた。4月下旬から毎月、格安のフリーマーケットや無料配布会を開き、延べ3000人を支援した。
小野寺さんの双子の息子には重い障害がある。「この子たちが安心して暮らせるまち、障害の有無に関係なく笑って暮らせるまちをつくりたい」。思いは震災後、いっそう強くなった。その目は今、気仙沼全体の復興にも向く。
仕事などで障害者が社会に出るためには「商店街の再生が不可欠」と考えている。10、11月の2回、商店主向けのビジネススクールを開催。11月23日には「東北マルシェ」と銘打った特設市場を商工会議所駐車場などに設け、約20店舗が出店してにぎわった。
高台に誰もが安心して集え、「マルシェ」が開けるような広場を造りたい―。新たな目標も見つけた。
「震災で友人らが犠牲になった。悲しくなるときもあるが、地域に恩返しする使命がある。立ち止まってはいられない」
活動の幅を広げる小野寺さんの勢いは、とどまるところを知らない。「被災して多くのものを失った今こそ、本当の力の見せどころ」。新年も、走る。

買い物に来た女の子に笑顔で商品を手渡す小野寺さん=24日、気仙沼市三日町2丁目の「三日町オレンジ」
河北新報 2011年12月26日月曜日
東日本大震災の津波で拠点施設を失った。気仙沼市で障害者の自立支援事業に取り組むNPO法人「ネットワークオレンジ」の代表理事、小野寺美厚(みこ)さん(42)。震災のわずか12日後、自宅で子どものデイサービスなどを再開した。「活動を始めることが、お世話になった地域への恩返しになる」。突き動かしたのは強い使命感。「人が元気なら必ずまちは再生できる」(3月26日付)
市役所から徒歩で約2分。ビルの1階に、今の活動拠点「三日町オレンジ」がある。
障害者が働く駄菓子屋、誰でも立ち寄れるコミュニティーカフェ、アート創作スペース…。今月23日に始めた「歳末縁日」(28日まで)では、ヒーローショーやギターコンサートなどを企画した。
24日、駄菓子やおもちゃを買いに来た子どもたちに笑顔で声を掛ける小野寺さんの姿があった。「お楽しみくじを引いてみる? 何が当たるかな?」。子どもからお年寄りまでの楽しそうな声が響く。
震災後、ぼろぼろになった施設を見て言葉を失った。知的障害のある子ども向けのデイサービス施設と、18歳以上の若者の就労を支援する駄菓子屋。市内にあった二つの活動拠点は、津波で見る影もなくなった。
行動は早かった。3月23日に自宅の居間などでデイサービスと就労支援を始めたのに続き、6月には活動の中心を「三日町オレンジ」に移した。
支援物資の配布にも取り組んだ。NPOや企業関係者に電話し、国内外から食料や衣類を集めた。4月下旬から毎月、格安のフリーマーケットや無料配布会を開き、延べ3000人を支援した。
小野寺さんの双子の息子には重い障害がある。「この子たちが安心して暮らせるまち、障害の有無に関係なく笑って暮らせるまちをつくりたい」。思いは震災後、いっそう強くなった。その目は今、気仙沼全体の復興にも向く。
仕事などで障害者が社会に出るためには「商店街の再生が不可欠」と考えている。10、11月の2回、商店主向けのビジネススクールを開催。11月23日には「東北マルシェ」と銘打った特設市場を商工会議所駐車場などに設け、約20店舗が出店してにぎわった。
高台に誰もが安心して集え、「マルシェ」が開けるような広場を造りたい―。新たな目標も見つけた。
「震災で友人らが犠牲になった。悲しくなるときもあるが、地域に恩返しする使命がある。立ち止まってはいられない」
活動の幅を広げる小野寺さんの勢いは、とどまるところを知らない。「被災して多くのものを失った今こそ、本当の力の見せどころ」。新年も、走る。

買い物に来た女の子に笑顔で商品を手渡す小野寺さん=24日、気仙沼市三日町2丁目の「三日町オレンジ」
河北新報 2011年12月26日月曜日