視覚障害者の行動範囲広げるが…
サドルとペダルが2つある2人乗り用「タンデム自転車」。2人でこぐため、楽に走行でき、視覚障害者には後部座席に乗ることで自転車を楽しみ、行動範囲を広げることもできる。ただ、2人乗りでの公道走行を禁止する都道府県が多く、解禁されているのは8県にとどまる。愛好者や視覚障害者からタンデム自転車の走行解禁を望む声が上がっている。(横山由紀子)
息もぴったり
タンデム自転車は、1人乗り自転車より車体は約50~60センチほど長い。後方に乗る人はハンドル操作の必要がないため、視覚障害者や高齢者、子供らが乗車して行動範囲を広げることができる。
道路交通法上、タンデム自転車で公道を走行することは違反ではない。しかし、各都道府県の公安委員会は乗車人員の制限を定めることができるため、地域によって対応が異なる。現在、タンデム自転車で公道走行が可能なのは、兵庫、愛媛、広島、宮崎、佐賀、長野、山形、新潟の8県。ただ、鳥取県は制限解除に向け、検討している。
公道走行が認められていない大阪府では視覚障害者らの団体が中心となって平成24年、普及を目指す任意団体「大阪でタンデム自転車を楽しむ会」(大阪市西淀川区)を設立した。
大阪府道路交通規則では「3輪自転車の乗車人員は乗車装置に応じた人員を超えないこと」とあるため、3輪のタンデム自転車であれば2人乗りの公道走行が可能になる。そこで、同会は後ろに2つの車輪を設置した3輪のタンデム自転車を用意し、貸し出したり、試乗会を行ったりしている。
同会会長で、大阪市東淀川区の全盲の視覚障害者、鈴木昭二さん(64)は時々、この3輪のタンデム自転車での走行を楽しむ。前に健常者に乗ってもらい、「せーの」の掛け声で2人でペダルを踏み込む。途中、「曲がりますよ」「はい」「ストップします」と息もぴったりだ。
鈴木さんは「風を感じて気持ちいい。自転車に乗れる喜びを感じるひととき。視覚障害者は徒歩やバス、電車などで移動しますが、自転車が加われば、行動範囲が広がり、とても便利になります」。ただ、現状の3輪では重さが加わり、こぐのも大変。「通常の2輪での解禁を望んでいます」(鈴木さん)
生活も充実
5日には同会主催でタンデム自転車の勉強会を大阪市内で開催。2人用のタンデム自転車を使ったバイクに、スイム、ランの3種目を競うパラトライアスロン(障害者のトライアスロン)選手で、視覚障害者の山田敦子さん(40)=兵庫県尼崎市=が「タンデム自転車があれば視覚障害者も自転車に乗る楽しみを味わうことができる。タンデム自転車が多くの公道で使えるようになってほしい」と訴えた。
大阪市立大学大学院工学研究科の吉田長裕准教授(交通計画)は「タンデム自転車の活用は移動手段が限られている視覚障害者にとって、通勤や通学が便利になり、社会参加が促される。手軽に買い物に行くことができるなど行動範囲が広がり、生活の充実にも直結する。大きな可能性を秘め、エコロジーな乗り物の普及が進む意義は大きい」と話している。
タンデム自転車を楽しむ全盲の鈴木さん(後部座席)。掛け声と共に息を合わせて乗るのがコツだ=大阪市西淀川区
2014.8.17 07:10 SankeiBiz
サドルとペダルが2つある2人乗り用「タンデム自転車」。2人でこぐため、楽に走行でき、視覚障害者には後部座席に乗ることで自転車を楽しみ、行動範囲を広げることもできる。ただ、2人乗りでの公道走行を禁止する都道府県が多く、解禁されているのは8県にとどまる。愛好者や視覚障害者からタンデム自転車の走行解禁を望む声が上がっている。(横山由紀子)
息もぴったり
タンデム自転車は、1人乗り自転車より車体は約50~60センチほど長い。後方に乗る人はハンドル操作の必要がないため、視覚障害者や高齢者、子供らが乗車して行動範囲を広げることができる。
道路交通法上、タンデム自転車で公道を走行することは違反ではない。しかし、各都道府県の公安委員会は乗車人員の制限を定めることができるため、地域によって対応が異なる。現在、タンデム自転車で公道走行が可能なのは、兵庫、愛媛、広島、宮崎、佐賀、長野、山形、新潟の8県。ただ、鳥取県は制限解除に向け、検討している。
公道走行が認められていない大阪府では視覚障害者らの団体が中心となって平成24年、普及を目指す任意団体「大阪でタンデム自転車を楽しむ会」(大阪市西淀川区)を設立した。
大阪府道路交通規則では「3輪自転車の乗車人員は乗車装置に応じた人員を超えないこと」とあるため、3輪のタンデム自転車であれば2人乗りの公道走行が可能になる。そこで、同会は後ろに2つの車輪を設置した3輪のタンデム自転車を用意し、貸し出したり、試乗会を行ったりしている。
同会会長で、大阪市東淀川区の全盲の視覚障害者、鈴木昭二さん(64)は時々、この3輪のタンデム自転車での走行を楽しむ。前に健常者に乗ってもらい、「せーの」の掛け声で2人でペダルを踏み込む。途中、「曲がりますよ」「はい」「ストップします」と息もぴったりだ。
鈴木さんは「風を感じて気持ちいい。自転車に乗れる喜びを感じるひととき。視覚障害者は徒歩やバス、電車などで移動しますが、自転車が加われば、行動範囲が広がり、とても便利になります」。ただ、現状の3輪では重さが加わり、こぐのも大変。「通常の2輪での解禁を望んでいます」(鈴木さん)
生活も充実
5日には同会主催でタンデム自転車の勉強会を大阪市内で開催。2人用のタンデム自転車を使ったバイクに、スイム、ランの3種目を競うパラトライアスロン(障害者のトライアスロン)選手で、視覚障害者の山田敦子さん(40)=兵庫県尼崎市=が「タンデム自転車があれば視覚障害者も自転車に乗る楽しみを味わうことができる。タンデム自転車が多くの公道で使えるようになってほしい」と訴えた。
大阪市立大学大学院工学研究科の吉田長裕准教授(交通計画)は「タンデム自転車の活用は移動手段が限られている視覚障害者にとって、通勤や通学が便利になり、社会参加が促される。手軽に買い物に行くことができるなど行動範囲が広がり、生活の充実にも直結する。大きな可能性を秘め、エコロジーな乗り物の普及が進む意義は大きい」と話している。
タンデム自転車を楽しむ全盲の鈴木さん(後部座席)。掛け声と共に息を合わせて乗るのがコツだ=大阪市西淀川区
2014.8.17 07:10 SankeiBiz