第189通常国会は9月27日、閉幕した。会期を戦後最長となる95日間延長したが、新規の政府提出法案の成立率は88%にとどまった。社会福祉法人改革を柱とした社会福祉法改正案は成立せず、継続審議となった。安倍晋三首相は会期末を控えた24日、家族を介護するために離職する人をゼロにしようと介護施設の整備や介護人材の育成を進める方針を明らかにした。
与党が安全保障法制を最優先に成立させたことが響き、法案の成立率は2014年の通常国会(97・5%)から落ち込んだ。通常国会で成立率が9割を切るのは13年以来。参院で少数与党だった「ねじれ国会」時と同様の低水準だ。
社会福祉法改正案は、衆院では7月31日に可決。参院では安保関連法や改正労働者派遣法をめぐる与野党の対立の影響で審議入りしなかった。
法案は介護福祉士の資格取得方法の見直しも盛り込んでいる。現行法は16年度の介護福祉士養成施設卒業生から国家試験を課すことにしているが、法案はそれを猶予しようというものだ。
15年度中に法案が成立しないと猶予できず、養成施設が大混乱に陥るため、厚生労働省は秋の臨時国会で成立させたい考えだ。
また、介護分野を追加する予定の外国人技能実習制度の適正化法案も成立せず、継続審議となった。
社会保障関係では18年度から国民健康保険の運営主体を都道府県に移す医療制度改革法が成立。複数の医療機関や介護施設の一体的運用のため、社会福祉法人も傘下に入ることのできる「地域医療連携推進法人」も、改正医療法の成立によって設けられる。
24日、安倍首相は自民党本部で会見し、アベノミクスの三本の矢の後を継ぐ「新三本の矢」を発表した。①国内総生産(GDP)600兆円の達成②子育て支援の拡充により希望出生率1・8③介護離職ゼロ−を打ち出した。
具体的には、幼児教育無償化の拡大、多子世帯への重点的な支援などにより、現在1・4にとどまる出生率の回復を図るとした。
家族を介護するために離職を余儀なくされる介護離職は年間約10万人に上るが、首相は介護施設の整備、介護人材の育成、在宅介護の負担軽減を図り、仕事と介護を両立できる社会を目指す。
ただし、これらに必要な財政規模やその財源などは明確にせず、翌25日の会見でも「日本の構造的な問題である少子高齢化に真正面から挑み、『1億総活躍社会』を創る」と述べるにとどめた。
2015年10月05日 福祉新聞編集部