■地元開催「良いとこ見せなきゃ」
荒川河川敷のサイクリングロードを、自転車競技部員の先陣を切ってさっそうと走り抜けていく。「なるべく風の抵抗が強い先頭を走るようにしているんです」。24日にJRさいたま新都心駅周辺で行われる国際自転車レース「さいたまクリテリウム」の個人タイムトライアルに、女子として初めて出場する7人のうちの1人だ。
中央大の自転車競技部にいた父、康さん(51)の影響で、小学6年の時に競技を始めた。北本市内のクラブチームに所属すると、中学1年で全国大会の中学生女子の部で5位入賞。平日に毎朝欠かさず行う康さんとの朝練も実を結び、3年時には一般女子を含む全国大会で優勝した。
その大会直前、別の大会で落車し左手中指を骨折。康さんに「強い選手はけがをしていても勝つ」と励まされ、指をテーピングして臨んだ。「日常生活のきついことも自転車に比べれば全然平気。精神力が鍛えられた」と笑う。
自転車で県内トップレベルの県立浦和工高に進学後は、朝夕の自主練習を含め毎日100~200キロを走り、ウエートトレーニングにも励む。3月に全国高校選抜大会女子500メートルタイムトライアル、8月に全国高校総体の女子ケイリンを制した。最速で時速55キロにもなる競技中はカーブで落車することもしばしば。生傷は絶えないが「けがをする度に次はこうしてみようと勉強になる」と貪欲だ。
今年で開催3回目のクリテリウムには、女子選手と障害者自転車競技選手が初めて参加する。出場を知らされたときは「まさか女子が出られるとは」と喜ぶと同時に「私でいいのかな」と不安もあったという。
それでも、「実力を知るいい機会にもなる。全力を出し切って、女子選手でもこれぐらい走れるんだということを見せたい」。男子選手と並ぶとひと際目立つ150センチという体格も「小さい分、空気抵抗は少ないしメリットもある」と臆するところはない。
生まれ育った地元での大会、友達や仲間も応援に来る。「良いところを見せなきゃ」と、女子の意地もかかっている。
2015.10.18 産経ニュース