厚生労働省は15日、障害者総合支援法の見直しに関連し、グループホーム(GH)から一人暮らしへの移行を目指す人などを対象とした定期的な巡回訪問と随時に対応するサービスの創設を検討する考えを明らかにした。一方、GHは重度の人が暮らす場と位置づけ、軽度の人は利用対象から外すことも視野に入れる。知的障害者、精神障害者の重度化・高齢化に対応できるよう、サービスを再編する。
同日の社会保障審議会障害者部会は、2016年通常国会への改正法案提出に向け、委員の意見を集約する段階に入った。これまで議論してきた論点のうち①常時介護を必要とする人への支援②移動支援③就労支援−について、厚労省が見直しの方向性を示した。
定期的な巡回訪問と随時に対応するサービスは「常時介護が必要な人」への対応策として浮上。GHで暮らす人の7割弱を占める知的障害者、2割を占める精神障害者のうち、軽度の人が一人暮らしできるよう支える。
専門のスタッフがアパート探しなど衣食住を支えるほか、日常的な健康管理、対人関係の調整などを担う。
横浜市の「自立生活アシスタント」(利用登録879人、支援事業者数38。2014年度実績)がその具体例という。
また、「地域生活支援拠点」(体験宿泊、緊急時の受け入れ、相談、コーディネート)の整備も加速させる。
GHには障害支援区分の軽い人が多いとの指摘があるが、厚労省は重度の人でも暮らせる場にしたい考え。軽度の人については一人暮らしできる体制を整えることを前提に、GHの利用対象者から外すことを模索する。
委員からは「軽度者を追い出すことありきではいけない」とクギを刺す声のほか、「横浜市はお金をかけすぎだ。過疎地で定期巡回をやるのは無理」といった意見が上がった。
生活支援拠点の整備も「賛成だが、国が誘導しないと普及しない。より実効性を伴うものにしてほしい」「重要なことだが、地方に丸投げの現状では絵に描いた餅だ」といった意見が上がった。
就労支援はメリハリ
移動支援は就労移行支援、障害児通所支援(いずれも個別給付)で通勤・通学の訓練を実施するよう誘導する。現在、通院の支援は個別給付の対象だが、通勤や長期にわたる外出の支援は対象外となっている。
就労支援の各サービスは一般就労への移行、工賃の向上が大原則だが、事業所によって内容、工賃、一般就労への移行率などにバラツキがある。厚労省は、障害者やその家族が適切に選択できるよう、事業所にそうした情報の公表を義務づける方向で検討する。
また、工賃や一般就労への移行率が高い事業所には障害報酬で高く評価するなどメリハリを付ける方針だ。
ことば
自立生活アシスタント=横浜市が一人で暮らす知的障害者の在宅支援として2001年度から始めた事業。後に精神障害者、発達障害者、高次脳機能障害者を対象に追加した。
アシスタントは同市独自の拠点「地域活動ホーム」「生活支援センター」などに配置され、24時間体制で対応する。衣食住、健康管理、金銭管理、対人関係などに関する相談に応じる。利用料は原則無料。半年から1年ごとに個別支援計画を見直す。一拠点当たりの登録人数は25人、アシスタントは2人、事業費は年間約1000万円。障害者総合支援法の既存サービスには、この事業の機能と部分的に似たものがある。
関係機関を訪問する横浜市磯子区内の 自立生活アシスタント(左)
2015年10月26日 福祉新聞編集部