知的障害者がデザインしたロゴマークを使う企業が現れ始めた。まずは、格好良さや速さが売りの自動車部品製造販売会社が採用を決定。色鮮やかで、少しコミカルなデザインは従来の企業イメージの枠を広げる。仕掛け人のコンサルティング会社社長、鬼頭秀彰さんは「助けてあげるとか、かわいそうとかじゃなく、みなが楽しみながら彼らの能力を認めてほしい」と話す。 (飯田孝幸)
鬼頭さんは二〇一一年から、知的障害者が書く文字を使って名刺を作る「キセキノメイシ」プロジェクトに取り組んでいる。文字デザインを手がけるのは埼玉県川口市の障害児(者)支援団体「からふる」が月一回開催するアート活動に参加する中高生ら三十三人。
今夏、鬼頭さんが「彼らに企業のロゴを書いてもらったら、おもしろい作品が生まれるかも」と子どもらに呼び掛けたら、期待を超える作品ができた。九月にあったロータリークラブのチャリティーオークションに、知的障害者に会社のロゴをデザインしてもらう権利を出品したところ、参加した約百社のうちコンサルティング会社など六社が応札した。
本来なら、最高額を入札した会社にだけ権利を売ればいいが、せっかくだからとすべて引き受けた。このうち、千葉県芝山町の自動車部品製造販売「トラスト」(池田勝社長)がまず、海外展開などで使用するブランド「GReddy(グレッディ)」のロゴに採用を決めた。
以前から使用しているロゴは青い文字を斜体にしたデザイン。新しいロゴは赤青緑オレンジとカラフルな色づかいでコミカルな字体で、からふるのMASAさん(25)とAKIHIROさん(15)=いずれもペンネーム=が共同で作成した。
トラストは来年一月十五~十七日に千葉県の幕張メッセである自動車関係の展示会で新ロゴを広くアピールする。自動車関連雑貨への使用、参戦する自動車レースの車両やスポンサーになっているレーシングチーム「ViVaC Team TSUCHIYA(ビバック・チーム・ツチヤ)」の車両へのロゴ添付も検討。チームがからふるの子どもたちをレースに招待する計画も進む。総務課の梅沢貢さんは「わが社のシンボルでもあるタービンをカタツムリなどでデザインしていただいた。かわいらしいイメージが完成してありがたい」と話す。
鬼頭さんは「いろいろな企業が、障害者週間(十二月三~九日)のある十二月だけ、ホームページのロゴを障害者がつくった作品に変えるといった使い方もできないだろうか」と夢を膨らます。
トラストのロゴのほか、子どもたちが遊び心で描いた企業ロゴは各社の許可を得たうえで、セルリアンタワー東急ホテル(東京都渋谷区)の一階ギャラリーで開催中の絵画展「Art of the Rough Diamonds(ダイヤの原石)」会場で展示している。十八日まで。
(東京新聞)
トラストが以前から使用しているブランドのロゴ(上)と新しいロゴ |
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