2020年東京パラリンピックに向け、障害者スポーツのすそ野を広げるにはどうしたらいいか。広告・デザイン会社社長の沢辺芳明さん(42)に聞きました。
■広告・デザイン会社社長 沢辺芳明さん(42)
仕事柄、「どうやったら便利か」というユーザー・エクスペリエンスを考える。街には「イラッとポイント」がたくさんあって、そういう視点で見れば、「世の中もっと良くなる」と思うことが日本には多くあります。
たとえば駅の自動改札。幅が狭くて車いすが通れず、代わりに駅員の前にゲートがあるけど、そこは扉を自力で開け閉めしないといけない。仕事で海外に行くと、日本の福祉行政やバリアフリーは「あればいいだろう」というものが多いと気づく。
2020年に向けて、危惧しているのは人の気持ちです。日本人は障害者に対して「かわいそう」って思いが先に来てしまいがちですよね。僕も一歩外に出れば、社長ではなく立派な障害者。「仕事」と言えば「施設でですか?」と言われることがあります。
11月に総合演出した日本財団パラリンピックサポートセンターの共同オフィスは、「アスリートはスポーツを楽しみ、競技団体の職員たちも自ら楽しもう!」という意味を込めて、「i enjoy!」というコンセプトでデザインした。
あえて言わせてもらえば、パラリンピックは誰も見ない。今のままでは面白く見せられていないから。でも本当はすごく面白い。その魅力を伝えていかねばならない。
「車いす体験をして障害者理解」は啓蒙(けいもう)期ならいい。でもこれからは違う。プロジェクションマッピングやCGをガンガン使って、「あの選手、超かっこいい!」ってファンクラブができるところまで、5年で持っていきたいですね。
さわべ・よしあき 1973年、東京都生まれ。バイク事故で車いす生活に。24歳で広告・デザイン会社「ワン・トゥー・テン・デザイン」を設立し、社長をつとめる。日本財団パラリンピックサポートセンターの共同オフィスを総合演出した。
沢辺芳明さん
2015年12月26日 朝日新聞デジタル