リハビリといえば通常は、障害が起きた後の機能回復訓練のこと。しかし、がんの診療では障害を防いだり軽く済ませたりするための予防目的のリハビリがある。そうしたリハビリに取り組む施設は増えてきたが、どこでも受けられるわけではない。専門家は「病院を選ぶ際にはリハビリに熱心な施設かどうかにも目を向けて」と話す。
東京・信濃町にある慶応大病院腫瘍センターのリハビリ室。食道がんの手術を翌日に控えた初老の女性が、器具を使って呼吸の練習をしていた。「弱く長く吸いましょう。あまり強く吹かないで。そうです」。理学療法士の声に合わせ、器具にゆっくり息を吹き込む。
食道がんは胸部と腹部を開く手術が必要で、術後は傷の痛みや全身麻酔の影響で呼吸が浅くなりがち。たんがたまって肺炎になりやすいため、その予防のためのリハビリだ。空気を多く取り込む腹式呼吸の方法も確認した。
「2、3日は大変ですが徐々に管も抜けます。頑張って動きましょう」。療法士の言葉に、緊張気味だった女性も「はい」と笑顔を見せた。
同センターリハビリ部門長の辻哲也准教授は「術後の肺炎などの合併症を防ぐには、深い呼吸や起きて体を動かすことの大切さを、患者さん自身に前もって知ってもらうのが有効です」と話す。
手術後のしんどい時期に初めて説明を聞くのと違い、意義が分かっていてスタッフとも面識があれば前向きに取り組みやすい。何をするか事前に知っていれば回復の道筋をイメージでき、不安の軽減にも役立つという。
辻さんによると、かつては合併症が出てからの事後対応が主だったが、国内でも十数年前から先駆的な取り組みが始まり、手術前に予防リハビリを受けた人は合併症の発症率が低く入院期間も短いことなどが確認され、関心が高まった。しかしどの病院でも受けられるとは限らない。
がんのリハビリが充実している施設の目安となるのが、規定の研修を受けたスタッフの配置が必要な「がん患者リハビリテーション科」があること。辻さんは「リハビリに熱心な病院は一般にがん診療の水準も高い」とし、病院を選ぶ際、念頭に置くよう勧めている。
東京都の広瀬真奈美さん(52)は、自身の乳がん経験から体を動かす大切さを痛感し「キャンサーフィットネス」という団体を2014年に設立した。専門家と協力し、がん患者のためのさまざまな運動プログラムを都内で提供している。
リハビリといえば通常は、障害が起きた後の機能回復訓練のこと。しかし、がんの診療では障害を防いだり軽く済ませたりするための予防目的のリハビリがある。そうしたリハビリに取り組む施設は増えてきたが、どこでも受けられるわけではない。専門家は「病院を選ぶ際にはリハビリに熱心な施設かどうかにも目を向けて」と話す。
東京・信濃町にある慶応大病院腫瘍センターのリハビリ室。食道がんの手術を翌日に控えた初老の女性が、器具を使って呼吸の練習をしていた。「弱く長く吸いましょう。あまり強く吹かないで。そうです」。理学療法士の声に合わせ、器具にゆっくり息を吹き込む。
食道がんは胸部と腹部を開く手術が必要で、術後は傷の痛みや全身麻酔の影響で呼吸が浅くなりがち。たんがたまって肺炎になりやすいため、その予防のためのリハビリだ。空気を多く取り込む腹式呼吸の方法も確認した。
「2、3日は大変ですが徐々に管も抜けます。頑張って動きましょう」。療法士の言葉に、緊張気味だった女性も「はい」と笑顔を見せた。
同センターリハビリ部門長の辻哲也准教授は「術後の肺炎などの合併症を防ぐには、深い呼吸や起きて体を動かすことの大切さを、患者さん自身に前もって知ってもらうのが有効です」と話す。
手術後のしんどい時期に初めて説明を聞くのと違い、意義が分かっていてスタッフとも面識があれば前向きに取り組みやすい。何をするか事前に知っていれば回復の道筋をイメージでき、不安の軽減にも役立つという。
辻さんによると、かつては合併症が出てからの事後対応が主だったが、国内でも十数年前から先駆的な取り組みが始まり、手術前に予防リハビリを受けた人は合併症の発症率が低く入院期間も短いことなどが確認され、関心が高まった。しかしどの病院でも受けられるとは限らない。
がんのリハビリが充実している施設の目安となるのが、規定の研修を受けたスタッフの配置が必要な「がん患者リハビリテーション科」があること。辻さんは「リハビリに熱心な病院は一般にがん診療の水準も高い」とし、病院を選ぶ際、念頭に置くよう勧めている。
東京都の広瀬真奈美さん(52)は、自身の乳がん経験から体を動かす大切さを痛感し「キャンサーフィットネス」という団体を2014年に設立した。専門家と協力し、がん患者のためのさまざまな運動プログラムを都内で提供している。
(熊本日日新聞 2015年12月18日朝刊掲載)