本人の強みを見いだす…ベルギーで在宅支援
認知症になっても住み慣れた場所で暮らせる支援を考える講演会・シンポジウム「認知症と共に地域で暮らす」(認知症専門フォトン・ジャパンフレンド主催、読売新聞など後援)が7日、東京都内のよみうり大手町ホールで開かれた。ベルギーで在宅支援に取り組むNPO代表による講演の後、専門家ら3人が討論。家族が認知症本人と接する際の助言から、成熟した社会のあり方まで、テーマは広範に及んだ。
■講 演
ベルギー西部、ブルージュ市から来日したNPO「フォトン」代表のバルト・デルトゥールさんは、認知症の人を地域ぐるみで支える活動について講演した。フォトンは、自治体の補助金や民間の寄付金で運営されており、人口約12万人の同市が進める「認知症に優しい街」運動の推進役でもある。この運動は、2012年、欧州内の優れた活動として表彰されている。
「フォトン(foton)」は光の粒子を意味する。私たちは認知症の人やその家族に希望を与える光でありたい、と願って名付けた。
認知症の人の家に専門カウンセラーを派遣し、在宅生活を支援するほか、見守りなどを担う市民ボランティアの育成にも組織的に取り組んでいる。有償と無償のボランティアがあり、有償の人たちの給料は補助金から支払われる。
活動拠点「フォトンハウス」は誰でも気軽に立ち寄れ、図書室には認知症の本やDVDがそろっている。認知症に関する作品を書いた作家の講演、介護者らが体験を語り合う催しも定期的に開かれている。
ハウス内には「やすらぎの一杯」と名づけたカフェもある。当初は認知症の人ばかりが集まっていたが、今では精神障害者やホームレス、地域の人なども自由に訪れるようになった。
会話ができない認知症の人も歌は歌える。そこで、合唱団を結成し、家族と一緒に歌える場を用意した。
支援をするうえで大切なことは、認知症に対するマイナスのイメージを変え、ポジティブ(肯定的)な見方をすることだ。認知症の人を弱い人間として見るのでなく、彼らの強みを見いだすことが重要なのだ。

(2015年12月27日 読売新聞)