オリンピックのあとにパラリンピックが開催されるように、5月11日(土)、WTS世界ワールドトライアスロンシリーズ横浜・エリートの部が終わり、5月12日(日)朝7時15分、障害のある選手たちによる「パラトライアスロン」が山下公園(横浜市)で繰り広げられた。つめたい雨と汗にまみれた翌日は一転しさわやかな晴天となった。会場は早朝から多くの観戦客でにぎわった。
トライアスロンは、オープンスイム・ロードバイク・マラソンの3種目を順にこなす競技。さまざまな距離やルールのレースがあるが、横浜では、オリンピック・パラリンピックと同じ種目が行なわれた。
パラトライアスロンは、スイム750m、バイク20km、ラン5kmのトライアスロンで、2016年リオデジャネイロ・パラリンピックの正式種目に決まった。横浜は今年で2回目の開催となり、新たにITU(国際トライアスロン連合)ポイントが加算され本格的になってきたが、まだまだ始ったばかりの競技でもある。
3種目を7つの障害クラス(TRI1~TRI6a/b)と男女に分かれて順位を競うが、レースは一斉に行なわれる。
エントリーは、選手25人(+視覚障害のガイド6人)。完走者は24人。水温17.4度で冷たさが心配されるなか、スイムから無事にスタートした。
総合優勝を競う場面では、TRI5(片足義足)が世界的に選手が多く、レベルの高い激戦区である。今回も世界トップの選手を含む男子6名が参加した。
優勝は、1時間8分47秒でブラジルのマルセロ・マウロ(TRI5/33歳)が、今シーズン2連覇を果たした。
マウロは、過去2008年北京パラリンピック水泳400m自由形で6位入賞。2004年アテネパラリンピックでも7位入賞している。15年前交通事故で片足の筋肉と神経を失い、バイクとランをやっていなかったので、集中してやりたかったと言う。昨年のWTSオークランド大会からパラトライアスロンを始め、4月のサンディエゴ大会でスイム750mを9秒台で泳ぎ、ついに優勝。
「横浜の人たちがとても親切で、楽しくレースが出来ました。リオで、ゴールドメダルを狙っています」
日本の古畑俊男(TRI5/51歳)は、アメリカのマイケル・ジョンソン(TRI5/33歳)に続き3位、トップとの差2分15秒の1時間11分2秒でゴール。古畑は、マウロにスイムで約4分負けたが、他2種目でマウロを上回っていた。ランはベテランには辛いミスで1週多く走ってしまった。合計タイムで3位だった。レース後、悔しい表情をみせつつも最後には「1週多く走れて、よかったですよ!」と、冗談まじりの話題と清々しい微笑みでトライアスロンの楽しさを伝えてくれた。
視覚障害(TRY6)は、白江淑弘(TRY6b/54歳)とガイドの田中相司が、昨年優勝の中澤隆(TRY6b/33歳)・原田雄太郎を4分22秒引き離して1時間18分58秒で優勝。前回大会の逆転を果たした。
今回、パラリンピック水泳日本代表で、パラトライアスロン初出場の木村潤平(TRI1/28歳)、江島大祐(TRI3/27歳)、荒力(TRI1/37歳)らは、スイムでリードしたいと意欲を燃やしたが、14分台で、先輩格のスイマー、マウロの10分22秒が大変速かった。
ロンドンパラリンピック車椅子マラソン4位の副島正純(TRI1/41歳)は、腕の力だけで3種目をこなす。初出場で、1時間17分11秒の総合4位。TRY1は、バイクがハンドサイクル、ランが車椅子マラソンとなるが、車椅子マラソンは健常者のマラソンの半分近いタイムで走る高速なスポーツである。
「初のトライアスロンだったが、私には、スイム、ランにまだ伸びしろが大きいと思う」と自覚して、長距離を含む次の挑戦へ意欲を示した。
レース終了後のゴール付近は、パラリンピックのコーチやメカニック、支援するカメラマンが訪れ、選手の義足やハンドサイクル、車椅子レーサーなど、これまでのトライアスロンではみることのなかった道具たちを囲み、専門種目のころ交流のなかった選手や、はじめて会う選手は同じトライアスリート仲間としてつながりあった。
大会を主催するITU会長・マリソル・カサド氏は9日の記者会見でパラトライアスロンに触れ、「トライアスロンは、もともと障害者も健常者も一緒に挑んできた競技だが、パラリンピックでの開催にむけて、まだまだ課題を抱えている。日本のリーダーシップにも期待している。」と話していた。
写真;1位マルセロ・マウロ(ブラジル)、2位ミカエル・ジョンストン(アメリカ)、3位に、古畑俊男。)
パラフォト- 2013年05月13日