横須賀市立うわまち病院は病棟が老朽化が進んでおり、できるだけ速やかに立て直しをする必要があるのは、誰の目から見ても明らかと思います。2009年にうわまち病院に心臓血管外科を開設した時には、5年後を目処に病院を建て直しすると聞いておりましたが、残念ながらその後の市の方針で、立て替えの計画は大きく遅れて現在に至っております。現市長になり、早期に立て替えを進めるために現在の場所での立て替えを断念したと、発表され、非常に不安を感じます。
もともとの国立横須賀病院から、赤字病院の整理のために市に移管し、公設民営として、うわまち病院が誕生しました。それによって患者サービスの改善、救急患者の積極的受け入れ、高度医療の推進などによって黒字経営を続けております。2009年の心臓血管外科開設は筆者が初代部長として、開設準備から携わり、機器の選定、スタッフの教育、ICUの開設・運営を皮切りに、特に大きかったのが、麻酔科の常勤医師の招聘に成功したことでした。これにより、夜間の緊急手術が可能となり、それまでほんとど行われなかった夜間・休日の緊急手術が可能となり、心臓・胸部大血管の救命手術も実施できる体制が構築しました。それによって、筆者の前任地の鎌倉の病院や、葉山の病院まで救急患者を搬送する必要がなくなりました。心臓血管外科においては、病院における高度医療の旗印として、低侵襲心臓手術など、県内の病院ではまだあまり行われていない手術にも対応しています。診療科も28診療科に増加し、100名以上の常勤医師が常駐し、この規模にしては非常に拡充し発展していることに、横須賀市の住民の方にご評価頂いている部分も大きいと思います。
今後病院の建て直しにあたって、同じ場所での新築移転であれば、現在の体制を堅持拡充する方向で準備を進めるということになりますが、もし別の場所へ移転ということになれば、病院の目的、必要な体制が大きく変わる可能性があります。もともと横須賀・三浦地区は三方を海に囲まれており、大都市圏と違い、隣接した市町村以外から患者さんが来る環境ではありません。そのため、病院経営的には、より患者さんのアクセスが良好なロケーションとすることが非常に重要です。もし、一部の人が主張するように久里浜など郊外へ移転した場合は、主に久里浜地区で必要な医療規模に限定した病院規模でよいことになります。また、近隣に大病院があるから中央地区には必要ないと考えているひともいるかもしれませんが、それは間違いです。それは百貨店などの店舗が複数あるから、その街に買い物に行くのと似ています。患者さんにとっても病院を複数選択できる環境がより良い医療を提供することになり、病院のサービス低下を防ぐことになることは、うわまち病院が出来る前の横須賀の医療を考えれば自明のことと思います。心臓血管外科をかかえる病院である以上は中央地区のアクセスがいい場所に存在することが必須です。記事のごとく、これからもうわまち病院としての役割を存続させるには、そのことを理解している人間によって構想を進めていく必要がある、と私見ながら、横須賀の医療を担う一員として、また診療科を運営する責任者として思います。
病院の現地での立て替えの障害としてアクセス道路が狭く、新しく開発するのに必要な規定以上の広さがないということがあります。病院が他の場所へ移転してしまうことの商店街の更なる損失、および住民の方の利便性の損失はかなり大きいはずで、拡幅にご理解を得られないはずはないと、確信しております。