横須賀うわまち病院心臓血管外科

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病院の総合力 = ハートチームの実力

2018-08-27 07:32:27 | 心臓病の治療
 最近の心臓血管外科のキーワードとして、ハートチームという言葉をよく耳にします。主に、患者さんの治療方針について、他職種で協議して適切な方針を決定していく、という内容で学会でも議論をされています。特に大動脈弁置換術のカテーテル治療(TAVI)などでは、治療方針をチームで相談するという施設基準も設けられたりしています。これは、外科医の独断的な治療方針になるのを避けて、患者サイドの医療経済的にも適切な方針を決定するのに役立つというものです。
 しかしながら、本来のハートチームは治療方針の決定だけでなく、一人の患者に対して病院の総合力として他職種として、治療に総合的にあたるというのが理想ではないでしょうか?
 循環器の専門施設などでは、たしかに心臓外科専用の手術室やICUだったりで自由に設備を他の診療科と競合することなく使用することができる、として外科医としては、理想的な環境として向かう方向性があります。うまく機能すると、効率よく多くの手術をこなすことができるので、ハイボリュームセンターになるほど、専門施設化する傾向にあります。しかしながら、こうした専門施設では、たとえば、脳神経外科や消化器科がなかったり、他の専門内科がなかったりすることで、こうした複雑な合併症を持っている患者さんなどは対応しなかったりすることも見られます。また、術後に合併症を起こしたりすると、他の病院に転院が必要なこともあります。
 そうした意味では、合併症を持つ患者さんの場合は、いろいろな病状に対応できる施設、いわゆる病院の総合力が高い施設が理想的です。こうした合併症や難しい病態に合わせてその都度患者さんにカスタムメイドされたようなチーム構成が可能な病院が総合力が高い病院とも言えます。横須賀市立うわまち病院では、2002年に横須賀市から管理委託されて公設民営化されてから、診療科も徐々に増加し、現在28の診療科があり、心臓血管外科も2009年に開設されております。それまで活発に診療していた循環器内科に心臓血管外科が加わることで、それまでできなかった、特殊なカテーテル治療や植え込み型除細動器などの新しい治療ができるようになっただけでなく、外科治療もスムーズに開始できるようになりました。心臓血管外科が開設されて以来、共同に連日カンファレンスなどを通じてハートチームとしての機能を形成してきました。それに加えて、心臓血管外科解説と同時に複数の常勤麻酔科医体制となり、また自治医科大学さいたま医療センターからの麻酔科応援もあり、24時間緊急症例にも対応可能となりました。心臓血管外科だけでなく、他診療科の緊急手術にも対応可能となりました。手術室の体制も徐々に充実し、手術スタッフの夜勤勤務も開始され、より早急に緊急手術ができる体制が構築されております。うわまち病院開設以来、救急医療の充実を病院をあげて努力してきましたが、ドクターカー2台を運用し、救命センターが開設され、より救急体制の充実によって、様々な救急疾患に対応できる環境の中、心臓血管外科も救急部の協力を得て、スムーズな救急対応が可能となっております。2017年からはICU専属医師の体制が確立し、周術期の管理、院内感染対策も充実しました。医師の補助的な手技を実施可能な診療看護師(NP:Nurse Practitioner)も導入され、より周術期管理が充実してきております。高齢者の患者さんが多いうわまち病院では、他の診療科に関連する合併症を持つ患者さんも多い為、その都度、その専門家が院内にいるため事前に相談も可能ですし、術後の合併症に対する対処も適切に可能となっています。たとえば、創部の感染や癒合不全には、形成外科も併診し、また栄養・感染に対する対処で感染専門医や栄養管理チームが加わり、リハビリテーションの担当者、精神的なケアを行う緩和ケアチームも参加し、また、ご家族や社会背景にかかわる職種として医療相談室もかかわってきます。こうした院内のリソースをすべてハートチーム運用の流れの中で集学的に参加することで、より患者さんの病態や社会的背景にも適切にあわせて診療が可能となっています。また、これが地域の医療ともいえる形だと思います。
 これだけの職種をかかわることができる病院というのが理想の形とは思いますが、これを維持するためには相当数の患者さんの数も必要であるため、どうしても病院のロケーションや周辺に住む住民の人口や人口密度は病院運営に非常に重要です。
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