大動脈解離の診断は基本的にCTでの診断となります。突然発症の胸痛や背部痛の患者さんに対して救急搬送された場合はCTを撮影するのは常識の世の中になりました。以前は背部痛にCTまで撮影するのはやり過ぎという意見が大半で、心臓血管外科医としてはちょっとさみしい世の中でしたが、救急医療の教育が行き届いた現在では常識となっています。しかし、急性大動脈解離のCT診断の中には難しい症例も含まれ、CT画像のようにわずか1スライスで部分的な大動脈の内膜の石灰化が解離によって内腔側に移動している一点をもって診断する必要がある場合があります。これを見逃さないで診断する医師はまさに名医といえると思います。心臓血管外科医が見逃さないのは常識ではありますが、心臓血管外科医でさえこうしたわずかな変化を見逃して救急外来から帰宅させた事例を何度も見たことがあります。こうしたわずかな大動脈解離の変化は、一部の専門医の中には大動脈解離とは違う別の病態=内膜血腫というものと定義している人もいますが、はっきりした鑑別は困難です。いずれこの症例の場合は、内膜の亀裂を表すULP=Ulcer Like Projecttion(大動脈内膜の亀裂に造影剤が入り込んで突出しているように見える部分)を認めるので、大動脈解離と診断して良いものと思います。
