横須賀総合医療センター心臓血管外科

お気軽にコメントいただければ、一般の方の質問にも心臓血管外科専門医が答えます。

分枝の再建を伴う腹部大動脈瘤の手術点数

2020-10-14 16:16:51 | 大動脈疾患
腹部大動脈瘤の「大動脈瘤切除術」で腹部大動脈(分枝血管再建を伴うもの)59,080 点、
腹部大動脈(その他のもの)52,000 点の請求についての解釈

分枝再建とは主たる末梢血管(総腸骨動脈、外腸骨動脈、大腿動脈)以外への吻合(腎動
脈、下腸間膜動脈、内腸骨動脈など)をいう。シンプルな Y グラフト(総腸骨動脈あるいは
外腸骨動脈に左右 1 か所だけ吻合するもの)と、ストレートグラフトは技術的に大きな差
はなく、総腸骨動脈や外腸骨動脈を腹部大動脈の分枝とはいわない。

とあり、腹部大動脈瘤の手術で通常のY型人工血管置換術やI型置換、外腸骨動脈に再建する人工血管置換術は分枝再建の保険点数は請求できない、
ということになります。こうした通達が学会を通じてありました。逆に文章として、医師になって初めてこうした文章を目にすることになりました。

また同様に弓部大動脈置換においては弓部三分枝の1分枝以上を別個再建しないと弓部大動脈置換の保険算定はできません。大動脈解離においてはよく
弓部に一部切り込んでいる上行大動脈置換術は弓部置換で請求しなさい、と指導されたことが昔ありましたが、その後、当医局でも指導・訂正され教育されております。

しかしながらこうした保険請求のコツや、保険診療については何の教科書にも記載がなく、教育システムが全く欠如してしまっていることに変わりありません。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

心臓外科手術後にバイク・自転車の運転は大丈夫か

2020-10-14 00:41:18 | 心臓病の治療
 心臓手術後のバイク、自転車の運転については、いろいろ意見はあると思いますが、胸骨正中切開を行う手術(冠動脈バイパス術、弁膜症手術、胸部大血管手術)においては胸骨がしっかり癒合するまでの間は自転車、バイクなど両手でハンドルを支える二輪車の運転は2~3か月は控えるように指導しています。
 というのも、胸骨に負担のかかる運動、動作などをすることで、胸骨の癒合を妨げる可能性があるためです。特に自転車、バイクなどの運転中に衝突した場合や、倒れた自転車、バイクを引き起こす動作、通常の運転においても胸骨に極度な負担がかかる可能性があります。同じような負担がかかる可能性がある動作としては、腕立て伏せ、逆立ち、空手やボクシングのパンチのような動作などがあります。
 とはいえ、アメリカのプロバスケットボールの選手で、心臓手術後すぐに試合に出場した、という新聞記事が出るくらいですから、人による回復には差があり、特に支障がなければ制限する必要がないのかもしれませんが、固定しているワイヤーが切れたり、胸骨がワイヤーによって切れたりすることもあるので、注意する必要があることは変わりありません。
 最近増加している側方小開胸の心臓手術においては術後の運動の制限は特にしていませんが、創部の疼痛が運動の制限を必然的にしてしまうという可能性はあります。

 昔はアメリカ心臓病学会の指導で自動車の運転も術後二か月間は控えるように、と指導されていましたが、現在はパワーステアリングが普及し、片手でも指一本でも運転できてしまう時代になったので自動車の運転に関しては現在は制限されていません。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする