横須賀うわまち病院心臓血管外科

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肺塞栓症に対する外科的血栓除去術

2021-01-14 09:31:54 | 心臓病の治療
 肺塞栓症は下肢や腹部の静脈内に出来た血栓が血流にのって肺に流れ着き、肺動脈を閉塞してしまう疾患です。
 広範囲の肺動脈が閉塞してしまうと、左心系に血流が回らなくなり、心不全⇒ショックを起こします。また、肺での血液の酸素化が十分できないため低酸素血症を呈します。肺動脈圧が上昇するとともに、右室が拡大して左心系を圧迫するような超音波画像を認めます。
 治療は、抗凝固療法により新たな血栓形成を予防しつつ、線溶系の働きにより血栓がとけ、肺血流が改善することを期待する薬物療法。
 またヘパリンの持続点滴による、より積極的な抗凝固療法、
 血栓溶解剤を投与する、血栓溶解療法、
 閉塞した肺動脈にカテーテルを挿入し、風船で一気に閉塞部位を開く、BPA=Baloon Pulmonary AngiplastyなどがよりAdvancedな治療です。
 それでも循環が維持できないような症例は外科的血栓除去術の適応となります。これは肺動脈を切開して、中枢にある血栓を除去する方法ですが、肺動脈内を覗いても一般に縦隔内からは左右の主肺動脈しかみえず、その奥まで除去するには短道教などの内視鏡を使用する方法や、肺動脈末梢を露出して、切開し直接内膜ごと剥離して切除する方法もあります。

 開胸による血栓除去術に関しては、かつては循環停止とするために低体温で手術をしていた時代もありましたが、現在は横須賀市立うわまち病院心臓血管外科では、常温、心拍動下に肺動脈を切開して血栓除去を行っています。手技的に十分、心拍動下で血栓除去術を行うことは可能です。低体温、循環停止にする侵襲を少しでも少なくし、常温での手術にすることで人工心肺からの立ち上がりも、止血もスピーディーで手術時間を短くすることができます。
 上下大静脈に脱血管を留置することで、右心系を灌流する血液がなくなるため肺動脈を切開しても、サッカーで吸引する程度で十分視野確保、手術操作が可能になります。左心系を開けないので、塞栓症などのリスクもありません。
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MICS-CABGによるComplete Revasculization

2021-01-14 07:53:48 | 心臓病の治療
 左開胸の冠動脈バイパス術は縦隔炎や胸骨骨髄炎、創部の治癒障害が極めて少ないというメリットがあり、胸骨を切らないことで、術後の回復も極めて速い理想的です。左小開胸アプローチから、左内胸動脈と大伏在静脈、右内胸動脈、胃大網動脈との組み合わせで3枝以上の血行再建も可能で、筆者は最大4か所のバイパス作成をした経験もあります。
 この手術で最も難しいポイントは右内胸動脈の採取と、上行大動脈への大伏在静脈の中枢側吻合です。これが難しいので、なかなかこの手術が広まらないのが現状ですし、左開胸の冠動脈バイパス術は別個に手技が保険で認められる予定もありません。どの外科医も一般的に行える手技になって初めて保険適応として認められる現実があるので、できるだけこのMICS-CABGを世の中に広めていく必要があります。
 左内胸動脈を採取して左前下行枝に吻合するMID-CABであれば比較的導入しやすく、だれでもとは言わないまでも一般化する可能性があり、他病院への指導した経験もありますので、まずは1枝バイパスを広め、他の血行再建するべき枝はカテーテル治療で循環器内科にお願いする、いわゆるハイブリッド治療を普及させるのが最初かもしれません。
 横須賀市立うわまち病院としては、冠動脈バイパス術においても左小開胸アプローチでの完全血行再建を可能な症例は標準術式として今後は積極的に行っていきたいと考えております。

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