横須賀うわまち病院心臓血管外科

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肺塞栓症では右心系拡大・下大静脈拡張がおこる

2021-02-04 12:17:16 | 心臓病の治療
 肺塞栓症では肺動脈より先に血液が流れなくなるために、その手前の右心系拡大、下大静脈の拡張が起こります。そのため、PCPS(ECMO)は非常に脱血がよくなってかなり高流量を出せることが臨床的な特徴でもあります。肺塞栓症の血行動態に最も合致した治療がPCPSとも言えます。
 画像ではCTで下大静脈の拡張が著明に起こっているはずで、もしこの下大静脈の拡張がなく、反対に虚脱しているとしたら循環動態の悪化は肺塞栓無く症ではなく、敗血症などの別の原因を考える必要があります。言い換えれば、下大静脈の拡張をしない肺塞栓症はありません。通常、PCPSが装着された肺塞栓症は緊急手術の適応ですが、他の病態が合併している場合は慎重に適応の検討が必要です。

 肺塞栓症と敗血症の合併症例で、ショック状態の患者さんに遭遇し、治療方針を検討した際、ショックの原因が肺塞栓症以上に敗血症が関与していると判断し、緊急手術をしなかった症例を経験したので、その時勉強になった内容として、記載しました。
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