横須賀うわまち病院心臓血管外科

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縫合糸の緩みにはCor-Knotによるリカバリーショット

2021-08-02 14:54:36 | 弁膜症
https://blog.goo.ne.jp/gregoirechick/e/403b2308e5b4ce7505f4f484ba72bc52
の続きです。

【背景】自動縫合結紮器であるCor-Knotは縫合糸結紮の時間的短縮だけでなく、結紮困難な部位においても確実な結紮を可能にする画期的な手術器具である。
【目的】Cor-Knotの応用した使用方法として、結紮した縫合糸が緩んでしまった場合のリカバリーショットとしての使用方法を紹介する。
【基本的手技】Cor-Knotは、弁置換術及び弁形成術などに使用する純チタン製のクリップと専用のアプライヤである。縫合部位に配置した非吸収性縫合糸を、アプライヤに取り付けたクリップによってクリンプして固定し、余剰な縫合糸を切断することが可能であり、本品を使用することでノットプッシャーを使用することなく外科医の指が届かない部位の縫合糸結紮が可能となり、結紮に要する時間を有意に短縮出来る。
【縫合糸が緩んだ場合の使用方法】縫合糸の結紮が緩んでしまった場合は、縫合糸を牽引すると結紮点が浮いてしまい、その下に三角形の空間が形成されるが、この浮いた部分をCor-Knotのクリップが結紮点を超えて三角形の空間を潰すように挿入してクリンプして固定することで増し締めされるような形で緩みをとることが出来る。
【症例呈示】右小開胸アプローチによる大動脈弁置換+僧帽弁形成術において、大動脈弁縫着の際にバルサルバ洞が狭くて指先が入りにくい場所で用手的に結紮した縫合糸が2カ所で緩んでしまい、一カ所は縫合をほどいて結紮しなおしたが、もう一カ所は縫合がほどけにくいためCor-Knotで締め直した。他の縫合糸はノットプッシャーを使用し、緩み無く結紮出来た。
【考察】縫合糸が緩んでしまった場合の対処として、追加の縫合糸をかける、結紮をほどいて結紮しなおすなどの対処があるが、一度人工弁を縫着した後に行なうことは技術的に困難であり、追加針をかけることは人工弁損傷のリスクもある。大動脈遮断解除した後に弁周囲逆流などの所見を認め、再遮断しての観察で発覚する場合もある。こうしたトラブルや手術時間の延長を最小限に抑えるための方法としてCor-Knotによる増し締めが有効である一方、デバイスが保険償還出来ないというコスト面の弊害もある。この方法はMICSアプローチのみでなく、正中切開のアプローチでも有効であり、知っておくべき裏技である。
【結語】縫合糸の緩みにはCor-Knotによるリカバリーショットが有効である。
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