横須賀うわまち病院心臓血管外科

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MICS-CABGにおける両側内胸動脈採取のコツ:専用のリトラクターをどうするか

2021-08-13 06:12:35 | 心臓病の治療
 MICS-CABGの標準化においては内胸動脈の採取が最も基本となる手技になります。特に両側内胸動脈を採取することが出来れば、末梢吻合は正中アプローチよりも前壁、側壁領域においては難しくない場合が多いので、より普及が広まるものと思われます。
 この内胸動脈採取においてはリトラクターによる視野の確保さえできれば決して難しいものではありません。特に両側内胸動脈採取は日本国内で菊池慶太先生や坂口太一先生、吉田茂彦先生らが数多く実践しており、このクオリティは世界をリードしているものと思います。それぞれの手技のエッセンスはこれから学会などを通じて広まっていくものと思われますが、一番の重要なポイントはリトラクターによる視野確保です。
 筆者は開胸器にかけた吻合用のスタビライザーで視野確保を試みてきましたが、開胸器に固定することで安定した視野の固定は可能な一方、アームを反転して術野までもっていくにはどうしても長さが特に奥の方は足りなくなり、また術者の操作と器具のファイティングも起こってしまいます。左内胸動脈にはこれで充分でも症例によっては難しい症例もあり、特に右内胸動脈採取には制限が大きいです。
 この分野の第一人者である菊池慶太先生の推奨はOctopus NUVOというMICS-CABG専用のスタビライザーを使用することです。これは胸壁もしくは剣状突起下の上腹部から胸腔内に貫通して誘導し、貫通点とアームホルダーの二か所で固定することで安定した視野確保が可能です。先端には吸引式のスタビライザーがついているので、視野確保してグラフト採取した後は末梢側吻合の時にそのまま使用可能です。難点はコストです。MICS-CABGは特に手術手技料に加算はなく、人工心肺非使用の加算30万円しかありません。このOctopus NUVOは約30万円するので、他にポジショナーなどを使うと「赤字」とまでは言いませんが、病院の収益上のデメリットが大きくなり、これではMICS-CABG普及の障壁となります。施設によっては、このOctopus NUVOを使う代わりに視野確保のためのリユースのリトラクターを使用してこのコストを削減しています。リユースのステンレス製のリトラクターは30万円弱しますが一回購入するとその後のコストはかからないので、経営上のメリットは大きいと思います。このリユースのリトラクターとしては選択できる幅が少ないので、いろいろな種類が今後出てくるとを期待しています。現在、筆者が考案検討しているものを複数のメーカーに作成を打診しているところです。
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Shaggy aortaに対する大動脈遮断

2021-08-13 06:03:12 | 心臓病の治療
 Shaggy aorta syndromeは大動脈内膜の肥厚、粥腫などによる性状不良のため人工心肺による送血や大動脈遮断などの操作で粥腫から脳梗塞などの塞栓症を発症するリスクがあるため、こうした患者さんの手術を安全に行うことは心臓血管外科医にとって永遠の課題といえます。
 上行大動脈遮断して冠動脈血流を停止させ、冠動脈からは心筋保護液を注入して心静止下に心臓手術を行うのが基本ですから、この心停止手術を行う限りは避けては通れないリスクです。
 この大動脈遮断をShaggy aorta syndromeの患者さんに行う場合の対処として、まずは術前に造影CTで塾腫、肥厚程度を評価し、術中のEpiaortic Echoで詳細に評価することが前提で、実際に遮断が危険な場合は、僧帽弁、三尖弁手術においては大動脈弁逆流がなければ大動脈遮断せずに心室細動や循環停止下、もしくは心拍動下に手術を行うことも可能ですが、大動脈弁手術においては大動脈遮断は必須となります。
 その場合は、上行大動脈を循環停止下に人工血管置換して人工血管を遮断する、もしくは内膜肥厚はあっても内膜面の性状が良く遮断だけでは塞栓を起こさない可能性が高い症例では、循環停止下に大動脈切開して内膜の性状を直接見ながら遮断を行うという方法もあります。
 いずれにしろ、安全に大動脈遮断することは心臓手術においては非常に重要です。
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