横須賀市立うわまち病院ではCABGの約半数を胸骨正中切開しない低侵襲アプローチで行っています。右冠動脈のみの血行再建では、上腹部のみの開腹アプローチで、右胃大網動脈を右冠動脈後下行枝に吻合する、Transabdominal MIDCABという手術を行っています。これにより、胸を切らずに冠血行再建が可能です。
この手術の適応として、右冠動脈の閉塞病変で、末梢の灌流域が大きい症例(4PD 4AV両方を灌流)を対象としています。
除外症例として、心拡大症例(4PDが心拡大に比例して左方偏移するため)、右胃大網動脈が細い症例、吻合ターゲットの高度石灰化や枯れ枝様に性状不良な症例です。
手術の工夫として、スタビライザーを設置できる専用の金属バーを作成し、コンドルリトラクターの自由な位置に取り付けれるようにしていること、ケント鈎で胸郭を頭側に牽引すること、剣状突起を切除して頭側方向の視野を広げることです。注意点として、左横隔神経が心尖部方向に横隔膜を切開していくと近接してしまう可能性があり横隔神経麻痺が発生する可能性があることです。
横須賀市立うわまち病院では今まで4例に実施し経過良好で退院されましたが、胃大網動脈が使えない、心拡大により4PDが左方偏移していた、という理由で2例が胸骨正中切開に変更となっています。可能なら非常にいい方法ですが、慎重な検討が必要なことは間違いありません。