横須賀うわまち病院心臓血管外科

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膜様部欠損による心室中隔欠損症に対する右小開胸根治手術

2019-06-08 00:33:22 | 心臓病の治療
 横須賀市立うわまち病院では、可能な症例はすべて小開胸(側方開胸)での低侵襲手術を標準としています。

 心室中隔欠損のうち、三尖弁中隔尖直下のいわゆる膜様部欠損の症例はで、右房切開からのアプローチで閉鎖可能である為、右小開胸手術で対応可能です。心膜を右側胸壁に向かって複数の糸で牽引することにより、開胸創に近づき、皮膚切開を若干正中寄りにすることで、胸骨正中切開でのアプローチと同等の視野を得ることができます。
 三尖弁は僧帽弁に比較して、体の右側にあるとはいっても、胸骨と椎体とを結んだ正中のラインよりも若干左側にあることが多い為(写真)、胸骨―椎体間距離が小さい患者さんの場合には、視野が悪いことがあります。三尖弁輪に人工弁輪を縫着するように糸をかけて、この糸を牽引した上にさらにRetractorをかけることで右室内の視野が改善します。しかし、写真のように、胸骨―椎体間距離が小さいと、心室中隔は意外に体の前方にある為、Retractorで上方に牽引しても胸骨が邪魔して持ち上がらず、視野が不良な症例もあります。また胸壁からの距離が15cm近くになる症例もあるので、縫合糸の結紮にはKnot Pussureが必要です。

 正中切開の症例も同じですが、中隔欠損の位置が、三尖弁中隔尖の裏側に隠れている場合は、中隔尖の腱索に糸をかけて中隔尖を牽引して視野を確保したり、場合によっては中隔尖を弁輪中央部のみを切開して切り離して、その裏にある欠損孔の操作が必要な場合があります。中隔尖を切開した場合は、欠損孔閉鎖が終わってから弁輪に連続縫合で再縫合して修復します。

 中隔欠損孔は、流速の速い血流が常に通過しているために、繊維性の組織が、まるでトンネルのように覆っている場合が少なくありません。この組織はしっかりしている為、この組織を使って閉鎖可能な場合は、単純閉鎖で対応可能ですが、この繊維性組織がなく、心筋が露出している場合は、直接閉鎖では縫合糸で組織をカッティングしたり、寄せられた組織の中に伝導路が通過していたりすると術後の房室ブロックの原因となります。こうした症例は組織への緊張を分散させるために、やはり、パッチ閉鎖が望ましいです。

 パッチ閉鎖の場合は、自己心膜、牛心膜、ダクロンフェルトなどを使用します。パッチ閉鎖の方が、組織にかかる緊張が小さい為、組織のカッティングによる再発の可能性が少なくなります。

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