虫垂炎など腹腔内の感染症が起きたとき、おなかの中では感染に対して大網が武器になって感染を防御する役割があります。「大網はおなかのなかのポリスマン」という言葉を聞いたことがあります。
残念ながら胸腔内や心臓周囲には大網はありません。また胸骨や縦隔は非常に感染に弱い為、一度感染を起こすと重症化する可能性があります。咽頭炎や扁桃炎から喉の奥に感染が波及した場合、容易に縦隔内に感染が波及して重症の縦隔炎になることがあります。
周術期感染はもちろん、発生しなければそれにこしたことはありませんが、一般に心臓血管外科手術では1%前後の周術期感染が発生しています。いろいろな感染の発生予防のための努力を昔からしていますが、この感染の発生頻度は筆者が医師として仕事をはじめてからの20年以上、変わっていない気がします。感染予防にいろいろな施策をしてもその頻度が変わらない、これは、手術手技や予防策以上に、患者さん自身の因子が関係している可能性があるのかもしれません。もちろん、発生したあとの対処に関しては新しい治療法がいろいろ開発されて、その治癒率、生存率もかなり改善してきた感じがします。
心臓血管外科手術後の感染で、特に問題になるのは、縦隔炎や胸骨骨髄炎などで容易に敗血症に移行する重症の感染症です。抗生物質の投与だけではなかなか制御できないので、開創して洗浄、ドレナージのあとに、創部がきれいになったあとに、創部を単に閉鎖するだけでは、感染が再燃する可能性があるため、多くの場合は、腹腔内の大網を胸腔内まで誘導して充填する大網充填術を行います。大網は、血流が豊富なだけでなく、リンパ組織が豊富なため、感染を封じ込めてそれを制御する役割があります。これにより汚染された創部を封じ込めることができるため縦隔炎や胸骨骨髄炎、人工血管感染などにはしばしば行われる手技です。
胃切除後などで大網がない患者さんに対しては、大胸筋充填などの別の方法を選択されることもあります。
心臓血管外科領域で感染が発生することの一因として胸骨正中切開すること自体がリスクになります。よって、最近横須賀市立うわまち病院でも症例が増加している右小開胸の弁膜症手術や、左小開胸の冠動脈バイパス術、いわゆるMICS(Minimally Invasive Cardiac Surgery)では、まずこうした術後感染は発生しません。MICS手術を積極的に導入するようになってから、術後感染が激減している印象があります。
残念ながら胸腔内や心臓周囲には大網はありません。また胸骨や縦隔は非常に感染に弱い為、一度感染を起こすと重症化する可能性があります。咽頭炎や扁桃炎から喉の奥に感染が波及した場合、容易に縦隔内に感染が波及して重症の縦隔炎になることがあります。
周術期感染はもちろん、発生しなければそれにこしたことはありませんが、一般に心臓血管外科手術では1%前後の周術期感染が発生しています。いろいろな感染の発生予防のための努力を昔からしていますが、この感染の発生頻度は筆者が医師として仕事をはじめてからの20年以上、変わっていない気がします。感染予防にいろいろな施策をしてもその頻度が変わらない、これは、手術手技や予防策以上に、患者さん自身の因子が関係している可能性があるのかもしれません。もちろん、発生したあとの対処に関しては新しい治療法がいろいろ開発されて、その治癒率、生存率もかなり改善してきた感じがします。
心臓血管外科手術後の感染で、特に問題になるのは、縦隔炎や胸骨骨髄炎などで容易に敗血症に移行する重症の感染症です。抗生物質の投与だけではなかなか制御できないので、開創して洗浄、ドレナージのあとに、創部がきれいになったあとに、創部を単に閉鎖するだけでは、感染が再燃する可能性があるため、多くの場合は、腹腔内の大網を胸腔内まで誘導して充填する大網充填術を行います。大網は、血流が豊富なだけでなく、リンパ組織が豊富なため、感染を封じ込めてそれを制御する役割があります。これにより汚染された創部を封じ込めることができるため縦隔炎や胸骨骨髄炎、人工血管感染などにはしばしば行われる手技です。
胃切除後などで大網がない患者さんに対しては、大胸筋充填などの別の方法を選択されることもあります。
心臓血管外科領域で感染が発生することの一因として胸骨正中切開すること自体がリスクになります。よって、最近横須賀市立うわまち病院でも症例が増加している右小開胸の弁膜症手術や、左小開胸の冠動脈バイパス術、いわゆるMICS(Minimally Invasive Cardiac Surgery)では、まずこうした術後感染は発生しません。MICS手術を積極的に導入するようになってから、術後感染が激減している印象があります。