横須賀うわまち病院心臓血管外科

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冠動脈肺動脈瘻

2018-06-28 13:12:28 | その他
冠動脈瘻ともいう、先天性心疾患の0.5%を占めるまれな疾患です。冠動脈から分岐する異常血管が肺動脈や、まれに右房や上大静脈に流入する短絡性疾患です。
これにより、冠動脈の血流がシャントに流れ込み、冠動脈の流量低下が起きて狭心症を起こしたり、また異常血管が瘤化して破裂の危険があったり、またこうした異常血管には感染性心内膜炎のリスクもあるといわれています。

無症状でも短絡量が心拍出量の3割を超える場合は手術適応と一般に言われているようです。

短絡量が少ない場合は、そのまま未治療で経過観察されていることも多いのですが、症状があったり、瘤化を認めた場合は手術適応となることがあります。


治療としてはカテーテル治療による閉鎖(コイリング)で対応可能なこともありますが、複雑なものは、外科的に切除する必要があります。
外科的切除では、人工心肺を使用せず心拍動下に異常血管を切除する報告もありますが、これだと不完全な切除となり再発の可能性もあるため、通常は人工心肺を使用して、肺動脈を開けて流入口を閉鎖することで完全な異常血管の閉鎖が可能となります。この場合、当院では心拍動下に人工心肺を使用して、肺動脈を切開する方法を行っています。そのほうが、異常血管から流入する部位を直接確認することが可能です。心停止下に行う施設もありますが、この時は心筋保護液を左右冠動脈から注入し異常血管から肺動脈の流入口に心筋保護液が流れ出ることを確認する必要があります。

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3 コメント

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Unknown (sato1610)
2020-10-03 07:36:04
はじめまして。福島県に住む50歳です。8月下旬に胸の痛みで立っていられなくなり、救急車で総合病院に運んでいただき、狭心症の疑いで、後日造影CT検査にて冠動脈肺動脈瘻である事を発見していただきました。今までも何度も胸の痛みを訴えて他の病院を受診したことはありましたが、「肋間神経痛」と診断されて来ました。
今回、冠動脈肺動脈瘻を見つけていただき、この胸の痛みを解決してもらえたら良いと思っております。シンチ検査の結果、肺動脈への血の流入が確認できたとの事で、明日から心臓カテーテル検査の為、検査入院します。
できるのであれば、カテーテル検査の時に状態が悪ければ、そのまま閉塞処置はしてもらえるのか?
担当のお若い先生に伺ったのですが、症例が少なくて難しいと言われました。そう言われたら、今後良くならないのか不安になりました。違う病院や先生を紹介していただいた方が良いのでしょうか?
救急車で運ばれてから約1か月が経ち、それ以降胸痛が続いており、苦しい際には処方されたニトロを服用して今日にいたりましたが、担当のお若い先生は、その総合病院での外来が週に一回午前中しかないため、先日ニトロを服用しても良くならず、外来を受診しましたが、その時の先生は担当と違う先生でしたが、頼れそうな先生でした。
病院事情が分からない素人なのと、私の病気が良くなるのか不安でメッセージさせていただきました。
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Unknown (gregoirechick)
2020-10-04 01:46:34
@sato1610 ご質問ありがとうございます。冠動脈肺動脈瘻は心筋に行くはずの血流が、この異常血管に多く血流が流れてしまうため(シャント血流=短絡血流といいます)、心筋に到達する量が減って狭心症の症状を起こすことがあるため、この異常血管を閉鎖する手術が必要になることがあります。異常血管を閉鎖する手術は通常、開胸手術で行っていて、当院ではカテーテル的にコイルなどで治療した経験はありません。ニトロが効かないというのは、胸痛の原因が他にある場合と(年齢的には本来の冠動脈に狭窄があって、真の狭心症の可能性も否定できません)、ニトロでは異常血管に流れる血流を減少させることができない場合の二つの可能性があると思います。
 いずれカテーテル検査で精密検査したあとに正確な治療方針の説明があると思います。通常、心臓血管外科が常設してあり、日常的に心臓手術を行っている施設での治療が望ましいと思います。開胸での血管閉鎖術は決して難易度の高い手術ではありませんが、異常血管の閉鎖が不十分になりやすく残存してしまう症例が多々ありますので経験のある医師に手術していただいたほうが確実と思います。
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Unknown (gregoirechick)
2021-01-14 09:26:17
冠動脈肺動脈瘻の手術において、心停止下に行うか、心拍動下に行うかの議論になりましたが、大動脈遮断、心停止にはそれなりの心臓、大動脈への侵襲がかかりますので、少しでも低侵襲で手術が出来た方がリスクが低いと考え、横須賀市立うわまち病院心臓血管外科では心拍動下に肺動脈を切開して流入孔を確認、閉鎖する手技を行っています。これは肺塞栓症における血栓摘除術も同じように心拍動下に行っており、心拍動下でも手技的に十分可能であれば、より低侵襲な方法を選択すべきと考えます。こんな質問頂いたので追記しました。
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