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横須賀総合医療センター心臓血管外科

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医師過剰時代と医師不足の時代に生き残っていくということ

2020-08-25 05:23:52 | その他
 以前は医師過剰時代と言われ、これからの医師はその職業だけでは食べていけなくなるとも言われている時代がありました。そのころ、イタリアでは医師免許を取得しても就職先がなく、タクシー運転手をしながら生計をつなぎ、医師としての採用待ちをしてる人がたくさんいて、現に筆者の友人もパドバで教会の慈善活動をしながら医師採用を待っているという人もいました。世界で最初に大学の医学部(記憶ではボローニャ大学が世界最古の医学部と聞いています)が出来た国で起こっていることとして、医療先進国の行く末がこうでは不安に感じる時代でした。

 その一方で日本では戦後の復興がすすみ、徐々に人々の生活も豊かになっていく時代で、医療への需要もおおきくなって、特にへき地における医療体制の貧弱さを解決するために自治医科大学が設立され、卒業生をへき地に派遣することで、特に山間離島などに医療の灯をともすことが行われ始めていたにも関わらず、田中角栄首相の一県一医大構想で全国にたくさんの新設医学部が設立されて一挙に医師の大量生産時代に突入したため、このままではイタリアのように医師過剰時代が来る、と言われ始めた時代に筆者は医学部に入学し複雑な心境であったことを記憶しています。自治医科大学の入学試験の面接でも、「医師過剰時代における自治医科大学の役割は何か?」という質問をされ、「日本のへき地医療が充実されても、世界にはまだまだ医療を必要としている地域が無数にあり、大学の使命はまだまだある」と答えたのを記憶しています。

 イタリアではいつの間にか、医療費抑制の政策の為医師不足の時代になっており、この新型コロナウィルスの感染爆発で医療崩壊がすぐに起きてしまうという脆弱性を顕著に見えたのに対し、日本では国民が高度医療の普及を普遍的なものとして求め政策的に維持しているため、需要増による医師不足の時代となり、医学部定員をさらに2割増加させています。新型コロナウィルスの死亡率が日本が低いのはこの十分な医療供給体制があるからなのかもしれません。しかし、国がお金がないのに医療費に使う出費は増え続けている日本では、この矛盾でいずれ医療が財源的に成り立たなくなってしまうのではないか、という不安があります。解決策としては、自己負担額のさらなる増額とそれによる需要抑制・受診抑制で医療機関もダウンサイズしていくことが必須です。この新型コロナウィルスの感染爆発で多くの医療機関が患者さんが減って赤字になり経営状態が悪くなっている、と言われています。これは今まで必要のない受診が多かった、とも言えます。必要な分だけの医療供給でなりたつ医療が社会にとって無駄のない健全な体制なのかもしれません。
 当然、心臓血管外科施設も整理統合の時代になると、以前から言われており、施設として生き残っていくためにも日々努力が必要です。そのために常に良い医療を提供し、患者さんに満足してもらうこと、新しい手技、治療を積極的に取り入れていくこと、施設の治療内容を積極的に発信していくこと、後継者をつないでいくために若手医師を大切にすること、などが重要と考えています。
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