横須賀うわまち病院心臓血管外科

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外巻き生体弁の評判

2021-07-12 21:43:04 | 弁膜症
 外巻弁はステントの外側に生体弁の弁膜を張ることで弁口面積が大きくとれるというメリットがありますが、早期に壊れる症例があるので使用しないとする施設も多いと思います。外巻弁には大きく、アボット社のトライフェクタ、リヴァノバ者のクラウンがあります、また、クラウンの前モデルとしてマイトロフローというものも数年前までありました。

 マイトロフローは当時、イタリアのソーリン社が作った外巻弁で、筆者も2014年に多く使用経験がありますが、幸い早期の弁機能不全症例は今のところ聞いていません。またマイトロフローの改良版のクラウン弁も現病院で使用経験がありますが、こちらの弁も現時点で2016年から30例以上移植していますが、現時点では弁機能不全はなく、外巻弁でもTrifectaのように早期弁機能不全は起きないと思っていました。しかしながら前々回の胸部外科学会関東甲信越地方会でマイトロフローの早期弁機能不全の発表があり、会場からも早期弁機能不全の経験があるという医師も多数いて議論となり、やはりTrifectaに限らず、マイトロフロー、クラウン共に外巻弁は弁の可動範囲が大きいことで弁口面積が大きくなる一方、その分、弁膜にかかるストレスが大きくなって壊れやすくなるのではないか、という認識が一般化しているものと思われました。先週も都内の病院で、クラウン弁移植後の再弁置換手術を実施した施設があり、その部長に直接話を聞いたところ、3年ほどで再手術となったということでした。
 マイトロフロー、クラウンの最もいい点は、同じサイズでも実際の弁の大きさが最小であることです。特に19mm弁は現存する人工弁で最も小さく、一番小さい機会弁よりも小さいので、狭小弁のため機会弁しか入れられない、という事態が発生しなくなりました(この弁の使用経験がない施設ではいまだに狭小弁という理由で機会弁を縫着したという話を聞きますが。)マイトロフロー自体はその意味で筆者の印象としては悪くありませんが、他施設での評判としては外巻弁は早期に壊れる症例がある、という点で現時点では評判がいいとは言えず、使われる頻度も少ない生体弁と言えます。です。
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11 コメント

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Unknown (井手 新)
2022-09-13 21:38:05
2018-09-19 インスピリスRESILIA = 最新の大動脈弁用生体弁(30年耐用?)の記事で2021年にコメントをした者です。
その後、様子観察で状態を見ていましたが、担当のドクターが変わり、そろそろ心不全の症状が出る前に、手術を検討したほうがいいと言われました。
それで、1回目の手術を担当してくれた、ドクターに相談したところ、年齢的にも若いので、今回は機械弁をしたほうがいいと言われました。私としては、インスピリスの生体弁を考えていたのですが、迷っています。
今の弁はマイトロフローの物なので、弁の石灰化などの機能不全が、体質によるものなのか、弁によるものなのか判断しかねています。
ドクターは、体質的なものかもしれないので機械弁を薦めるということでした。しかし、今の弁がこの記事に有るような、機能不全をたまたま起こしたのであれば、もう一度インスピリスの弁で置換することも検討できるのかと思っています。
しかし、仮に10年から15年弁が持ったとしても、70過ぎから80歳前には、もう一度3回目の手術が必要になってきます。
やはり危険性は高くなると思いますので、これも迷っています。
機械弁にしたばあい、ワーファリン服用による制限とリスクも心配です。野菜がかなり制限されると聞いています。また、感染性心内膜炎のリスクも生体弁に比べると高いのではと思っています。他にも、脳梗塞や脳出血のリスクも考えます。
もしよろしければ、3回目の手術のリスクとワーファリンの副作用、現在のインスピリスの臨床評価など教えていただけると、非常に助かります。よろしくお願いします。
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Unknown (gregoirechick)
2022-09-14 10:46:51
ご質問ありがとうございます。現在のマイトロフローから新しい人工弁に再置換する場合は、確かに次の弁をどうするかという点で悩みますね。最近当院で13年前に移植した生体弁(Magna弁)を再置換した50代の患者さんがいました。この方は45歳での初回手術を極真空手をしている関係で生体弁を希望されたのでした。人工弁機能不全はなかったのですが、大動脈基部再建術が必要となったため、同時に新しい人工弁と変えました。見た目の人工弁の膜はかなり劣化していて、あと数年で逆流などが起きてもおかしくないと思われたためInspirisで再置換しました。Magna弁はInspirisの前のモデルで、これでも20年もちそうな外観をしていました。実は自分で執刀し移植した生体弁は数百件になると思いますが、それを再置換したのは今回がこの20年でおそらく初めてと思います。58歳でも特に生体弁にすることにこの患者さんも私も特に悩むことはありませんでした。
 現在65歳未満であればガイドライン通りに機械弁での人工弁置換を推奨するのは妥当と思います。ワーファリン服用を何十年も続けている患者さんの多くは特に問題なく経過していますが、確かに時々出血のトラブルを経験するのも事実です。納豆とクロレラ、青汁は食べられなくなりますが、他の野菜などはそんなに気にしなくともいいと個人的には思っています。機械弁の患者さんは規則正しい生活が基本となると思いますし、受診も定期的にきっちりして来てくれる方が多いですので、患者さんの性格によっても機械弁と生体弁で合う合わないがあると思います。
 以前にもお伝えしたとおり、当院では若年者の患者さんに関しては生体弁を希望される場合はInspirisを基本的に使用しています。他に、最近のデータとしてMedtronicのAvalusという生体弁も5年ほどのデータだったと思いますが、Inspirisと比較して同等の耐久性が証明されています。生体弁と機械弁の両方の話をすると、殆どの場合は生体弁を希望されますし、50代の自分がもし人工弁置換を受けるなら間違いなく生体弁を選択すると思います。
 三回目の手術が必要になる可能性はたしかにありますが、TAVI IN SAVEが出来る可能性は充分あります。2回目、3回目の治療をどうするか、ということは学会でもテーマになっていて、結論は出ていません。それぞれの患者さんに合わせて検討していく必要があると思います。
 現在はたしかMitroflow23mmだと思いますが、圧較差が上昇してきたということでしょうか。4m/sに達しても心機能、BNP、自覚症状などを総合的に診ながら再手術のタイミングを検討する必要があると思います。念のために再手術するというよりは、何らかのデータの進行などを根拠に再手術を勧めると思いますがその辺はいかがでしょうか?
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Unknown (井手 新)
2022-09-14 11:31:24
ご返事ありがとうございます。
across AV max velocity 476cm/s maxPG91mmHg meanPG52mmHgと今回なっています。
2D measurements EF:50.5% FS:25.9%
Simpson法:59.5%
自覚症状は、出ていないような気がします。普通に犬の散歩等日常生活を送っています。
執刀していただいたドクターは、弁の狭窄が早く進んだので、牛弁が硬くなる体質で、今回生体弁にしてもまた同じように早期に狭窄が起こるのではないかと心配しているようです。外巻弁が機能不全を起こしたとすれば、狭窄ではなく閉鎖不全になるのではとも言われました。
体質の影響も大きのでしょうか?
よろしくお願いします。
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Unknown (gregoirechick)
2022-09-14 12:46:23
情報ありがとうございます。担当医の方がおっしゃるように無症状でもそろそろ手術を勧めてもいい段階のように思います。たしかに弁膜の裂開による逆流であれば弁そのものの問題で体質とは必ずしも関係性の証明は難しいですが、たとえば透析患者さんのように血中リン濃度がもともと高いなど弁の硬化が起きやすい体質とすると新しくウシ弁を入れても早期に変性する可能性は否定できないかもしれません。マイトロフローに比較するとInspirisの抗石灰化処理はより強力に行なわれていると思いますが、実際には移植してみないと分からないというのが実情と思います。マイトロフローから進化して抗石灰化処理を強化したのが新型のCrown弁ということを考えると、Inspirisのほうが長持ちする可能性はあると思います。
 マイトロフローは外巻き弁ですが、ちょっと圧較差が大きく出やすいということも事実です。それを考慮しても人工弁通過血流速度が5m/sを超えるようなら手術が必須と思います。
 それから追加ですが生体弁と機会弁とで感染性心内膜炎の頻度が変わるというエビデンスはないと思います。ほぼ同等のリスクと考えていいと思います。どちらも年間1%ほどの脳梗塞の頻度があると思います。
返信する
Unknown (井手 新)
2022-09-24 23:14:51
再度コメントです。
ご返事いただけないようなので、私の回答に何か問題があったかと思っています。
お忙しいと思います。失礼しました。
最後に一つだけご意見をお聞かせください。
先生自身の問題としてとらえ、置換した弁に狭窄が見られた場合、生体弁を選んで、2回目3回目と手術を受ける可能性がある方を選びますか?先生の心臓外科医として、もし患者になった場合の立場での考えをお聞きしたいのですが。よろしくお願いします。
返信する
Unknown (gregoirechick)
2022-09-25 06:16:26
返信が届いておらず失礼いたしました。コメントを公開しないで返信だけ送ったつもりが、このシステムではコメントを公開手続きをしないと返信できないものだったようです。変身したつもりだったコメントを公開させていただきましたので参考になれば幸いです。ウシ弁が特に早く劣化または硬化する体質がある、ということは個人的には聞いたことがありません。透析患者ではカルシウムの代謝異常があるので石灰化が起こりやすく生体弁は早く劣化してしまう、というのは一般に知られていますが、他の高石灰化処理した弁で異常が出る、特に硬化が起こるというよりも、弁そのものに問題があった、もしくはマイトロフローを選択したことに問題があった、と考えることもできます。しかしながら、過去に生体弁を再移植して、早期に機能不全が繰り返し起きてしまい、最終的に機械弁を移植したケースを2例見ています。これは、たしかにそうした体質があるのかもしれません。現在の担当医の方も同じような経験をしていそれをもとに機械弁を推奨している可能性もあります。その意味で、機械弁を選択する、というのも妥当な考えだと思います。自分が患者だった場合、やはり同じように悩みますが、もし機械弁を担当医が推奨してくれていなかったらまた同じように生体弁を選択すると思います。今回のように、そうした機械弁を推奨してくれる医師に巡り合っていたのならその医師の意見を尊重すると思います。
返信する
Unknown (井手 新)
2022-09-27 21:37:36
ご返事ありがとうございます。
自分の中では、生体弁を選択しています。更に今回の手術も含めてあと3回必要かなとも思っています。
私にとって術後のQOLを考えると、ワーファリンのリスクよりも、再手術のリスクの方が低く感じるのです。
自分の信用できるDr.にオペをしてもらえれば、特別なことが起こらなければ、何も問題がないようにも思えるからです。
また、再手術で機械弁を選んだとしたら、初めに生体弁を選んだ意味がなくなるような気もします。
今回、機械弁にすれば、特に問題がなければ再手術はないと思います。生体弁なら、今回の手術の後に少なくとも更に1回、運が悪ければ2回になるかもしれません。しかし、再手術の方が自分にとっていいように感じるのはおかしいのでしょうか?
返信する
Unknown (井手 新)
2022-09-30 00:38:55
返信届いているでしょうか?
再度返信します。
返信ありがとうございます。
私の中では、生体弁と考えています。
やはり、残された人生のQOLを考えると、ワーファリンに対してのリスクの方が再手術のリスクよりも高く感じるからです。
先生たちの努力のおかげで、心臓手術の安全性が非常に高くなったのも、その理由です。
今回2度目の手術で、生体弁を選ぶと最低でも今回を含め2回、もしかすると3回の手術になるかもしれません。
今後は、その手術に耐えられる身体づくりをしていくほうが、私にとって有意義な生活のように感じます。
執刀医の方に、自分の考えを伝えようと思っています。
質問なのですが、1回目の手術の時に執刀医から、再手術は3回も4回もしている人がいると聞きました。
手術としては、患者本人の体力や体の状態が手術成功のカギになるのでしょうか?
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Unknown (gregoirechick)
2022-10-01 01:02:50
生体弁を使用したからといって、かならず通常よりも早く劣化がすすみ弁膜の硬化が起こるとは限らないと思います。一般にもっとも劣化に関係するのはカルシウムの代謝異常やリン酸の代謝異常に伴う弁膜の石灰化と言われており、それによって弁の可動性低下と石灰化した部分を起点に亀裂が起こると考えられますが、そうした身体疾患が特にないのであれば特に生体弁が壊れやすいとは言えないのではないか、と個人的には思います。残念ながら生体弁が早期に壊れてしまい特にその原因が特定されない患者さんがいるのは事実ですが、前回の移植弁がマイトロフローであることを考えると患者さんの体質よりも弁に原因があると考えるドクターの方が多いように思います。
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Unknown (井手 新)
2022-10-03 00:52:39
丁寧なご返事ありがとうございました。
一つ気になるのは、血液検査で8年くらい前から、クレアチニンの数値が1.12~1.20の間で常に変動していることです。45歳の時は1.00前後でした。
この数値も劣化の原因と考えらるのでしょうか?
色々と、ご返事できにくいような内容を質問してすみませんでした。本当にありがとうございました。
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