横須賀総合医療センター心臓血管外科

お気軽にコメントいただければ、一般の方の質問にも心臓血管外科専門医が答えます。

左小開胸の冠動脈バイパス術における静脈グラフトの中枢側吻合

2019-07-15 21:12:48 | 虚血性心疾患
 左小開胸の冠動脈バイパス術、いわゆるMICS-CABGにおいて、大伏在静脈の中枢側吻合は、通常は上行大動脈に部分遮断鉗子をかけて、MICS用のMicro持針器、攝子などを使用して行います。第4~5肋間からでは、上行大動脈は斜めの視野になるので、ちょっと技術的には難しい吻合になります。左内胸動脈、静脈グラフトの組み合わせで行う場合、手技として最も難しい吻合は、この上行大動脈への中枢側吻合です。この中枢側吻合ではKnot Pusherを使用した縫合糸の結紮が必要になることも、また出血した場合の止血操作も非常に難しい場合があります。また、この斜めの視野である為、自動吻合器のPAS-PORTや、中枢吻合デバイスであるEnclose-IIなども使用できません。Puncherも長めの専用のものが必要です。PAS-PORTで中枢側吻合を行う場合は、下行大動脈になら、創部をやや大きくすれば可能です。大動脈に静脈を吻合する際に、小開胸の創部から表在エコー(Epi-aortic Ech)で大動脈の内膜のプラークなどの性状評価はできないため、事前に造影CTで精密に評価しておくことが必要です。

 上行大動脈の性状が不良な場合は、部分遮断鉗子をかけることが脳梗塞などの危険性がある為、吻合操作ができません。この時の他の中枢側吻合の方法として、左腋窩動脈に静脈グラフトを吻合して、そこから肋間を通して胸腔内に誘導する方法があります。この場合は、冠動脈への距離があるため、通常よりも長めに静脈採取する必要があります。大腿全長よりも10cm近く長く採取することが必要です。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 冠動脈外科学会 in 金沢 | トップ | 大伏在静脈のNon-Touch Techn... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

虚血性心疾患」カテゴリの最新記事