横須賀うわまち病院心臓血管外科

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Redo MICS-CABG①

2021-07-31 04:37:24 | 虚血性心疾患
 Redo CABG(再CABG)は冠動脈バイパス術後のグラフト(バイパス血管)閉塞や新規病変のために狭心症再発や新たな心筋梗塞の危険のある患者さんに検討しなければならない難易度のきわめて高い手術です。もしRedo CABGをする必要なくカテーテル治療で血行再建できるのであれば、通常間違いなくカテーテル治療を選択するでしょう。しかしながら、カテーテル治療できないしょうれいであれば、このRedo CABGを検討せざるを得ない症例も存在します。
 CABG術後に再開胸して心臓手術を行う際は、開存するバイパス血管(グラフト)の損傷の危険性があり、この損傷は致命的なダメージにありうるため、いかにグラフト損傷を避けるかということが課題になります。本年1月29日のブログに記載した内容:https://blog.goo.ne.jp/gregoirechick/e/6a1ee9fc4ff0c6d783268642178db6bb
では、CABG術後のCABG以外の再手術(CABG以外)の話を記載しましたが、再CABGはさらに難易度が高くなる可能性があります。

 Redo CABGにおいても既存の開存するグラフトを損傷しないで吻合することは最重要で、次に再バイパスにはどのグラフトを採用するか、中枢吻合をどうするか、という問題があります。

 先日、当院で経験した症例では、20年前に他の施設で2本の大伏在静脈を使用して、上行大動脈から右冠動脈#3、および左前下行枝#7に血行再建されてあり、その後の狭心症再発症例で、対角枝と回旋枝#14-1(PL-1:Posterolateral branch)が責任血管である症例に対して、左第5肋間アプローチでこの2か所に再バイパス追加し狭心症を治療した経験があります。80代なかばの患者さんでしたので、小開胸アプローチで手術することで回復が非常に早く術後1週間で退院可能となりました。この場合のグラフトは左内胸動脈と下肢の大伏在静脈を使用し、左内胸動脈はIn situグラフト(中枢側はもともと鎖骨下動脈につながっているので中枢即吻合不要)で、大伏在静脈は長めに採取して左腋窩動脈に吻合して第2肋間から胸腔内に誘導しました。長めに採取することで心臓の可壁までカバー可能でした。対角枝、回旋枝領域のRedo CABGには左開胸アプローチが非常に有用で、特に中枢側吻合を上行大動脈にする必要がないことでグラフト損傷のリスクをゼロにすることが可能です。
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