人工弁置換術においては、ここ10年近く、機械弁から生体弁にシフトするようになり、海外においても、日本国内においてもその使用頻度が逆転している、と言われています。アメリカ心臓病協会のガイドラインでも65歳以上の人工弁置換には生体弁が推奨と言われています。2005年くらいまでは、機械弁が圧倒的に多く、7割以上が機械弁の時代もありましたが、2007年くらいに逆転し、7割以上が現在は生体弁を使用されています。
ガイドラインでは65歳以上とされていたのが、2017年の改定で、50~70歳は患者さんの選択も含めて検討したうえで選択することを推奨しているために、その周辺の年齢の患者さんの場合は、機械弁と生体弁、どちらにしますか?と説明をした上で選択してもらうことも多いと思います。実際は決められないので、どちらがいいですか?と聞かれることも少なくありません。しかし、最近は生体弁の性能が向上している、とも言われているので、生体弁を推奨することが増えています。
生体弁は牛心膜弁とブタ大動脈弁の二種類があります。牛心膜弁はステント(骨格部分)の内側に心膜を貼り付けた(マウントした)タイプ、ステントの外側に心膜を巻き付けた外巻き弁、ステントのない柔らかいステントレス弁があります。ブタ弁はブタの大動脈弁を取り出してステントの内部に貼り付けた形態をしています。ステント(金属製の骨組み)があると、その部分の容積の関係で、弁口面積が小さくなるので、ステントレス弁が一番弁口面積が大きく、その次に外巻き弁、で、最後に最も汎用されている、内部にマウントした弁となります。内部にマウントした弁が最初に開発され、その後に、弁口面積をより大きくするためにステントレス弁や外巻き弁が開発されてきました。というわけで、人工弁の性能を表すものとして、弁口面積が大きいほうが性能が良いと言っても過言ではありません。特に大動脈弁置換術では、狭い大動脈弁輪に縫着する人工弁は、より弁口面積が大きいものを入れた方が、圧格差が小さくなり、左室心筋の負担(後負荷)が小さくなり心不全の治療として効果が大きくなります。内部にマウントした弁でも、細部にわたる改良で、より弁口面積が大きいものが開発されてきております。機械弁と生体弁では、機械弁のほうが一般に弁口面積が大きくとれます。
また近年生体弁がより多く使用されてきた理由の一つは、患者さんが高齢化してきて65歳以上の方が増加したことが一番の要因です。以前調査したところ、前任地である自治医科大学附属さいたま医療センターで2005年に大動脈弁狭窄症で手術した患者さんの平均年齢が65歳であったのに対し、10年後の2015年の平均年齢が75歳と、たったの10年で10歳も増加しています。横須賀市立うわまち病院心臓血管外科での心臓胸部大血管手術を2017年に受けた患者さんの1/3が80歳以上であることを考えると、高齢化は更に進んでいるといえます。最近は90歳以上で弁膜症手術を受ける患者さんも当院では散見されます。
次に、生体弁が使用される頻度が増加した理由として、その性能が向上したことが認知されるようになったことです。弁口面積が改良されて大きくなった以上に、長持ちする生体弁に改良されて来たここ数年の流れがあります。特に石灰化防止処理がされたから、そのDurability(耐用年数)はそれまでの10年から20年ちかくに延長されています。弁によっては20年の再手術回避率が90%以上と言われているので、最近は20年持ちます、と説明することが主流だと思います。55歳から65歳までに大動脈弁置換術を生体弁で受けた患者さんが、生きている間に再手術が必要になる可能性が約3割、65歳から75歳だと1割、75歳以上だとほぼゼロに近くなると言われています。
同じ生体弁でも、どの人工弁を使用するかは殆ど外科医の裁量に任されているのが現実ですが、通常は患者さんの弁輪の形態などから判断して、最も適切と思われるものを使用します。
ガイドラインでは65歳以上とされていたのが、2017年の改定で、50~70歳は患者さんの選択も含めて検討したうえで選択することを推奨しているために、その周辺の年齢の患者さんの場合は、機械弁と生体弁、どちらにしますか?と説明をした上で選択してもらうことも多いと思います。実際は決められないので、どちらがいいですか?と聞かれることも少なくありません。しかし、最近は生体弁の性能が向上している、とも言われているので、生体弁を推奨することが増えています。
生体弁は牛心膜弁とブタ大動脈弁の二種類があります。牛心膜弁はステント(骨格部分)の内側に心膜を貼り付けた(マウントした)タイプ、ステントの外側に心膜を巻き付けた外巻き弁、ステントのない柔らかいステントレス弁があります。ブタ弁はブタの大動脈弁を取り出してステントの内部に貼り付けた形態をしています。ステント(金属製の骨組み)があると、その部分の容積の関係で、弁口面積が小さくなるので、ステントレス弁が一番弁口面積が大きく、その次に外巻き弁、で、最後に最も汎用されている、内部にマウントした弁となります。内部にマウントした弁が最初に開発され、その後に、弁口面積をより大きくするためにステントレス弁や外巻き弁が開発されてきました。というわけで、人工弁の性能を表すものとして、弁口面積が大きいほうが性能が良いと言っても過言ではありません。特に大動脈弁置換術では、狭い大動脈弁輪に縫着する人工弁は、より弁口面積が大きいものを入れた方が、圧格差が小さくなり、左室心筋の負担(後負荷)が小さくなり心不全の治療として効果が大きくなります。内部にマウントした弁でも、細部にわたる改良で、より弁口面積が大きいものが開発されてきております。機械弁と生体弁では、機械弁のほうが一般に弁口面積が大きくとれます。
また近年生体弁がより多く使用されてきた理由の一つは、患者さんが高齢化してきて65歳以上の方が増加したことが一番の要因です。以前調査したところ、前任地である自治医科大学附属さいたま医療センターで2005年に大動脈弁狭窄症で手術した患者さんの平均年齢が65歳であったのに対し、10年後の2015年の平均年齢が75歳と、たったの10年で10歳も増加しています。横須賀市立うわまち病院心臓血管外科での心臓胸部大血管手術を2017年に受けた患者さんの1/3が80歳以上であることを考えると、高齢化は更に進んでいるといえます。最近は90歳以上で弁膜症手術を受ける患者さんも当院では散見されます。
次に、生体弁が使用される頻度が増加した理由として、その性能が向上したことが認知されるようになったことです。弁口面積が改良されて大きくなった以上に、長持ちする生体弁に改良されて来たここ数年の流れがあります。特に石灰化防止処理がされたから、そのDurability(耐用年数)はそれまでの10年から20年ちかくに延長されています。弁によっては20年の再手術回避率が90%以上と言われているので、最近は20年持ちます、と説明することが主流だと思います。55歳から65歳までに大動脈弁置換術を生体弁で受けた患者さんが、生きている間に再手術が必要になる可能性が約3割、65歳から75歳だと1割、75歳以上だとほぼゼロに近くなると言われています。
同じ生体弁でも、どの人工弁を使用するかは殆ど外科医の裁量に任されているのが現実ですが、通常は患者さんの弁輪の形態などから判断して、最も適切と思われるものを使用します。