Dr. 鼻メガネの 「健康で行こう!」

ダンディー爺さんを目指して 日々を生き抜く
ダンジーブログ

ナイフ?

2006-08-20 | 医療・病気・いのち
 お腹の手術を始める場合、まずメスを手術介助看護師から受け取り、皮切(皮膚を切る)をするのが最初のステップだ。

 昔半身麻酔で胃や腸の手術を行っていた頃は、麻酔が切れるまでに手術を終える必要があり、早さがもっとも重要な技量だったと聞く。その頃は、メスの最初の一太刀で、内臓を傷つけないぎりぎりの深さまで切ることを目指していたようだ。

 それが全身麻酔の進歩と、電気メスの出現で変わった。

 現在でも、早さは重要なファクターではあるが、しっかりと麻酔科医が全身麻酔をかけ全身状態を管理してくれているので、確実性と安全性の方が当然プライオリティーが高い。 また、電気メスを用いるとやけどを起こす可能性のある、表皮のみ普通のメスで切り、後は電気メスで切開を進めた方が、ずっと出血が少なくてすむ。

 手の動きは速い方がよいが、経験が増え無駄な操作がそぎ落とされてくると、急がなくても手術は早くなるし、患者の体への負担も少なくなる。むだがなくなる過程というのは、手術に限らずどんな技術においてもいえることだろう。

 ちなみに「メス」というのはドイツ語だろうとずっと思っていたが、どうもオランダ語らしい。英語で言うとknife(ナイフ)になってしまう。手術室でナイフというのはどうも違和感があり、今でも、麻酔科医、看護師、助手に準備を確認し、「よろしくお願いします。」とチームと患者さんと手術の神(私が勝手にきっとそんな神もいるだろうと思っているのだが)に声をかけ、「メス!」の指示で手術が始まる。

そら

2006-08-20 | 想い・雑感
 台風の影響もなくなり、今朝は快晴。

 空を見上げ、「今日も暑くなりそうだ。」と思いながらも、
どこかに秋の気配を感じる。

 何の気無しに見上げる空。
空を背景にした地上の景色、雲の形や動き、空中を舞う虫、空飛ぶ鳥や飛行機。
今の日本人の中に、そこから恐怖というものを感じる人はほとんどいないと思う。

 しかし今、世界に目を向けると、空爆や砲弾への警戒や恐れから
空を見上げている人も少なからずいるはず。また戦時中の日本人も
同じであったろう。玉音放送を聞いて、「これで爆弾が空から落ちてこない。」
と安堵したという人の話も聞いたことがある。

 日本の空に、再び恐怖が戻ってくることがないように願う。
そして、世界の空に爆撃機が飛び交うことの無くなる日が
一日でも早く来ることを願う。

環境因子

2006-08-19 | 医療・病気・いのち
 アスベストと悪性中皮腫の因果関係が認められ、労災認定がおりた方もたくさんおられるだろう。因果関係が認められるものには補償がなされるのが当然だろうが、労働環境の中で、アスベスト問題は氷山の一角であろう。

 自社あるいは自身の関わる産業が癌などの疾患発病原因を内在している場合、その会社や産業は疾患との因果関係をなかなか認めようとしないであろう。そういうところを丹念に検証していくことは、国の大切な役目と思うがどうだろうか。

 知人に船に乗っている者がいる。化学物質を主に運搬するらしいが、荷役の際には、トルエン、タールその他、化学物質の蒸気をかなり吸ってしまうらしい。タールなどは有名な発がん物質だが、その仕事と発癌との因果関係を探るようなデータもないらしいし、55歳が定年という船員が発癌するとしても退職後である可能性が高い。なんとも難しい話である。

 そのうえ現在。山のような発癌物質を人間社会が地球環境に吐き出していると思われ、何と何に因果関係があるかを証明しようとするなどというのは、至難の業なのかもしれない。

国境

2006-08-19 | 想い・雑感
 学生時代には自転車に荷物を積んで、旅をしていた。
 北海道も2回に分けて2週間ずつの旅をしたことがある。
 根室半島にある、納沙布岬にも寄った。日本最東端とのことで
日本で最も早く朝日が登ると言われる場所である。経度を考えれば
そうなのかもしれないが、案外利尻山の頂上の方が、日の出を早く
見ることが出来る可能性もあるような気もする。

 それはさておき、その根室半島の沖合で、漁船がの乗組員が射殺されたという。
おそらく岬からは目視できるような場所なのではないかとと思う。そんな
近海で、事件が起こることが、国境が如何に重要かを伝えている。

 島国故、わたしも国境というものに無頓着だが、ロシアだけでなく、中国や
韓国との領有権問題もなかなか難しそうである。

 お隣さんとの土地の境界を巡っては諍いがよく起こると聞くが、日本人も
国境というものをきちっとそして冷静に考え、主張していくことが必要なのだろう。

歩ける幸せ

2006-08-18 | 想い・雑感
 左膝の半月板を傷めて一月以上が経ち、やっと松葉杖無しで歩けるようになった。怖くてゆっくりしか歩けないが、何とか階段も昇降出来るようになった。歩くという最も基本的な行動が出来るようになるというのは、本当に幸せ。痛みが無いというのも有り難い。

 体の移動をゆっくりしか行えない毎日を送っていると、それが当たり前になり、日常の行動全般もゆっくりとなった気がする。時の流れ方が変わると、心にも余裕が生まれる。ペースの遅さでいらいらすることが少なくもなった。

 膝の調子が完全回復しても、この気持ちの持ちようは、維持した方が良いかもしれない。

終末期の栄養

2006-08-17 | 医療・病気・いのち
 栄養が十分でない人がいれば、足りない分を補充してあげることにより体調が改善するものです。でも癌の末期になると、あまり多くの栄養を補給しても体が利用できなくなり、栄養や水分の補給がかえって患者の苦しみを増悪させることもあります。

 終末期における栄養療法の目的は、栄養状態の改善というよりも、本人のより良い状態を作り出すことです。栄養介入がかえって本人を苦しめるようなことは、厳に慎む必要があります。

 最後の時が迫ると、それまでより、栄養剤や点滴をずっと減らすことも必要なことなのです。そのことを医療者は本人や家族に説明し、本人や家族、とくに家族はそのことを理解する必要があります。

 誰だって、出来ることならより苦しみの少ない最後を迎えたいでしょうから。

腹腔鏡下手術

2006-08-16 | 医療・病気・いのち
 最近では、胃の手術も腹腔鏡下に行うことが増えてきた。
 
 通常の手術以上に、チームとしての成熟が必要な手術だが、腹腔鏡を利用することによって、患者は臓器を空気にさらす時間が短くなり、傷が小さくてすむ。

 さらには、モニターを皆で見ながら手術できるので、チームのすべてがやっていることが見える。

 難易度は高いが、手術やを拡大して見ることができるので、細かい操作ができる。ただ逆に見ている範囲が狭くなるので、常に全体像をイメージしながら、手術を進めていくことが大切である。そのイメージは、通常の開腹手術で培った経験が大きくものを言うと思う。

十人十色

2006-08-14 | 医療・病気・いのち
 言い古された言葉だが、人が一人一人違う存在であることを、本当に納得するのは、一生をかけてもなかなか難しいことなのかもしれない。

 背負っている歴史、身内、友人、知人、考え方、好み、仕事、生き方などなど、あらゆる面で人はそれぞれである。その違いを知るにはよく話すことである。

 患者に対し医師が治療方法を説明し、お勧めの方法を提示するときには、当然医学的見地立って説明をする。ここで医師に取って大切なのは、わかりやすく説明をすること、あまり強く意見を押しつけないこと、患者の意見をその人の生き方と考え受け容れることと思う。人それぞれなのだ。

 さらに、治療方法を患者が選択した後も、気が変わったようなときには、変更が可能であるならば温かくその意見を尊重することも大切であると思う。

 医療は、永遠の命を与えるものではなく、出来ることなら苦痛を取り除き、その人にとってより良き人生を送るための手助けをすることが重要な使命なのだから、患者自身の人生の有り様まで、あまりでしゃばらないことである。寄り添うくらいのあり方が、ちょうど良いのかもしれない。

墓参り

2006-08-13 | 想い・雑感
 我が家の墓は、少し離れているのであまり訪れないが、今日は墓参りをしてきた。太陽光線の強さにクラッとなりながらも、墓石を拭き、花を飾り、お線香をあげてきた。春や秋は、高台にある霊園から海も見えてさわやかなのだが、さすがに今日は息も絶え絶えで帰ってきた。

 ところで、墓石に水をかけて、いいものかどうか少し迷う。かけると何か清められるような、涼やかな感じがして良いのだが、今日のように熱くなった墓石に水をかけて良いのかどうか。突然冷やすことによって、石の風化を促しているような気がしないでもない。

 まあ、五十年、百年、二百年とどこまで我が家のお墓が存在しているかも分からないわけですから、あまり気にしても仕方ないか。

アスファルト

2006-08-13 | 想い・雑感
 照りつける太陽に焼かれたアスファルト。
水をまいても、あっという間に乾燥してしまう。
海辺の砂どころではない熱さと思われる。

 そのアスファルトの上を歩かされている、犬をよく見かける。
熱いアスファルトに足の裏を焼かれ、アスファルトからの照り返しに
体中を焼かれる。少し、想像力をもてば、犬をいじめているとしか
思えないのだが、どうでしょう。

 車の中に子供を置いて、パチンコをする親などは言語道断ですが、
乳母車に乗せられた、赤ちゃんもかなり暑い思いをしているそうです。

 子供や、動物への暑さ対策も忘れずに行動したいものです。

にわか雨

2006-08-13 | 想い・雑感
 今日も晴天。
 しかし、庭がぬれている。
 どうも、夜中ににわか雨が降ったようだ。

 今年の夏は、例年よりにわか雨、それも激しいにわか雨が多いような気がする。

 通り雨の後は、少し気温が下がり気持ちがいい。
 大規模な、打ち水大作戦状態。

 しかし、どうしても頭の中ではにわか雨の多さと、温暖化とが結びついてしまって、気に掛かる。

 早速、チームマイナス6%に参加しつつ、出来るときに、出来ることを一つずつといったところかな。

鬼手仏心

2006-08-12 | 医療・病気・いのち
 私にとって座右の銘に近いものとして、鬼手仏心があります。

 外科の「外」は外道につながるとも言われ、やはり人の体を傷つけることに対する諫めがあったのだと思います。

 人の体を傷つけるという手術という治療方法を考えるとき、その根本に命に対する慈しみが無ければならないと言うことを、強く教える言葉だと感じます。仏の心まではなかなかいけないにしても、優しさが無ければならないと言うことでしょう。

 でもそれだけではありません。鬼の手と言わしめるほどの技術を身につけることも求めている、非常にきびしい言葉だと思っています。

 どこまでそこに近づけるか。

局所麻酔

2006-08-12 | 医療・病気・いのち
 小学校の3,4年生ころ、ダイナモ付きの自転車に乗っていて、そのダイナモが回っている様子を見ながら進んでいると、突然衝撃が。

 なんと止まっているトラックの後ろ角に、頭からぶつかってしまったのだ。

 たらたらと血を流しながら、近所の外科医院へ。

 「ちょっと痛いよー。」と、注射をするのだが、2,3回ちくちくとした後、まだ針を何回か刺しているはずなのに、ちっとも痛くなくなった。それから縫いはじめた。針が通って行っているらしいのに痛みを感じない不思議な感覚。

 今にして思えば、局所麻酔。必要な領域に、局所麻酔薬を浸潤させ、神経を麻痺させてしまう。いろいろ処置をされているのに、何も感じないというのは、本当に妙な感じですよね。

生体肝移植

2006-08-12 | 医療・病気・いのち
 数年前に、かなり進行した肝硬変合併肝臓癌の方胃部分切除を行った。早期がんが胃に見つかったためだ。肝硬変の場合、術後に腹水があふれるほどたまる危険性が高く、そのまま肝不全から死へと進むこともあるので、かなり気を使う。

 先日、その方が生体肝移植を希望し大学を受診されていることを知った。胃癌が根治しているかどうかの問い合わせがあったからだ。

 通常肝臓癌に対する生体肝移植なら行うだろうが、この方がその候補になること自体に少し驚きを感じた。

 以前、肝移植が治療の選択肢となりうることを伝えなかったとして訴えられていた医師がいたが、たしかに生体肝移植は通常医療になりつつあるのかもしれないと感じた。保険適応になっているのにいまさらと思われる方もおられるかもしれないが、生体肝移植は、健康体の人から肝臓の一部を取ってくるというものである。外科医は治療という前提の下にメスを持つことを許されていると思うのだが、ただ臓器を取るためだけに、健康体にメスを加えていいものかどうかが、どうしてものどにつかえた骨のように気にかかる。

 実際、ドナー(臓器を提供する側)の死亡例が報告され、問題となっている。実際例が出なくても、手術に絶対はありえない。いずれ必ず死亡例は出ると誰もが思っていたのに違いない。

 これまで以上に、生体肝移植の適応を厳密に行ってもらいたいと感じる。

義歯

2006-08-12 | 想い・雑感
 週に一回、入院中の方で栄養摂取に問題があると思われる方を回診している。栄養士、看護師、薬剤師などとともに訪れる。

 栄養補給は、口から食べて頂けるような工夫を第一に考えるわけだが、ご高齢の方で食事摂取が不十分な場合、口腔内の問題があることも少なくない。

 「歯がぐらぐらする。」「口内炎がある。」「義歯が会わない。」などを訴えられる方が多い。その際には、食事を柔らかいものに変えるとともに、主治医に問題解決(薬剤投与、歯科受診、口腔内ケアなど)を依頼する。

 おそらく、家庭におられるお年寄りの中にも、同様の問題から、ついつい柔らかい食べ物を多く摂取している方が多いのではないだろうか。そのような食事は、炭水化物の補給は出来ても、タンパク質や脂質の補給が不足することも少なくない。

 口腔内のケアは大切です。