白石監督は「彼女がその名を知らない鳥たち」がとても良かったんですよね。
その後「孤狼の血」、「凶悪」を観たけれど、骨太な作品を作る今勢いのある監督だと思っていて、香取慎吾くんとの組み合わせは是非観たいと思ってました。
上映館が近くにないこともあって、もたもたしてるうちに終わっちゃいそうで焦りました。
観たのは6/28にオープンしたばかりの立川のKino Cinema、高島屋の8階にあります。
オープニング上映作品だったんですね(配給がキノフィルムズだもんね)
「誰が殺したのか」がキャッチコピーになっていて、サスペンスものかと思いがちだけど全然違っていて、鑑賞後にいろいろなことを考えた。
一番のテーマは郁男が依存症であり、そこから抜け出せずにもがき苦しむということ。
自分でも呟いてたけど本当にくずなの、人間のくず。
壮絶でしたね、その金を使う?って怒りを感じたし、最低最悪!人間じゃない!って思った。
ホントに足掻いでました。
慎吾くん、大きがガタイががさらに不器用な人、うまく生きられない人という印象だったし、
どうしようもなくギャンブルにのめりこんでいく危うさが本当に危なくて危なくて(3回言った)、クズ過ぎて泣けました。
そこで重要な存在だったのが恋人のお父さん。
お父さんは津波で奥さんを亡くして失意の日々を送ってて、自身も病気で余命いくばくもない。
若いころに荒んだ生き方をしていたのを奥さんと出会うことで救われたお父さんは、郁男に自分を重ねてたのかもね。
喪失と再生
津波ですべてを失ったけど、海によって生まれ変われることを知っていて
(それしか生きる方法がなくて)
だから癌になっても今までと変わりなくお父さんは漁に出る生活をし続けている。
(津波ですべてを失ったけど、海も生まれ変わった、ということを言ってましたよね)
人は簡単には変われないことを知っているけれど、生まれ変われることも知ってる。
さいごね、郁男が泣きじゃくる様は、私も一緒になって泣きました。
郁男の生い立ちは語られてないけど、
あの時、ありのままの自分自身を受け入れてもらって、初めてあんなに泣けたんじゃないかな、子供のように泣いてた。
ラストも秀逸でしたね。
静かな凪の海の底に、津波で奪われた人々の生活の残骸が沈んでた。
そうやって人は悲しみを乗り越えて生きていくんだと、
苦しさと同時に希望や救いを感じました。
凪待ち 2019年 ☆☆☆☆☆
監督:白石和彌
出演:香取慎吾、恒松祐里、西田尚美、吉澤健、音尾琢真、リリー・フランキー
木野本郁男(香取慎吾)はギャンブルをやめ、恋人の亜弓(西田尚美)と亜弓の娘の美波(恒松祐里)と共に亜弓の故郷である宮城県の石巻に移住し、印刷会社で働き始める。ある日、亜弓とけんかした美波が家に帰らず、亜弓はパニックになる。亜弓を落ち着かせようとした郁男は亜弓に激しく非難され、彼女を突き放してしまう。その夜、亜弓が殺される。