ノルマンディー地方のセーヌ川河口にある、フランスで2番目の規模の港町、ル・アーヴルが舞台です。
作家くずれで、羊飼いと靴磨きこそが、神とも人々とも、最も近いポジションにいられるという信念を持つ老人マルセルが主人公です。
妻のアルレッティとの二人暮らしは困窮の極みにありますが、二人とも意に介さず、落ち込むことも有りません。
アルレッティは近所の人たちが誉めたたえる程に良くできた妻で、靴磨きのくせに自分の靴に無頓着な夫の靴を磨いてやります。
そのアルレッティの唯一の楽しみは、夫が寝付いた後で、こっそりと吸う一本の煙草です。
マルセルも近所では嫌われてはいませんが、八百屋やパン屋には、ツケを溜め過ぎているために、煙たがられています。
ある晩、以前から食欲が低下していたアルレッティが上腹部痛で動けなくなり緊急入院となります。
主治医に、助かる見込みがないことを告げられたアルレッティは”少しの望みも無いの?”と食い下がります。
”奇跡が起こるのを信じましょう。”と言われた彼女は、”うちの近くでは起こったことは無いわ。”とフランス流のユーモアで言い返します。
そしてマルセルへの告知を、出来る限り遅らせることを主治医に約束させます。
アルレッティの入院と入れ替わるようにマルセルはひょんな偶然からアフリカからの密航少年をかくまい始めます。
敏腕警視であるモネはマルセルが怪しいとにらみ、警告しますが、マルセルはしらを切り通します。
近所の人たちは、アルレッティへの見舞いを通じて、彼女の余命が長くないことを察知します。
そのことに気づかず、少年をかくまうことに必死になっているマルセルを不憫に思い、近所の人たちは、彼に全力で協力します。
ようやく少年の密出国が成就しようとした場面で、残念ながら、モネが部下達を引き連れて船に乗り込んできます。
万事休すかと思われたのですが、なんとモネは目をつぶり、少年を見逃します。
無事に一件落着したマルセルが病院に駆けつけると、ベッドにアルレッティの姿は無く、前日に届けさせた彼女の服が、包みを開けられることも無く放置されています。
ところが、主治医の部屋に呼ばれたマルセルは、理由は分からないが、アルレッティが奇跡的に全快したことを告げられます。
これが、予告編で謳われていた、映画史上最高のハッピーエンドということなのでしょう。
とても評価が難しい作品です。言えることは、昔からそう感じていたことですが、フランス人は日本人よりも幼稚な国民性を持つのではないのかということです。
こんな幼稚な結末は、日本人には恥ずかしすぎてとても作れません。
しかし、観終わった印象としては腹は立ちません。
マルセル、アルレッティ、密航少年、モネ、八百屋の夫婦、パン屋の夫婦、靴磨きの後輩、酒場のオカミなど、良心的なキャラが多数登場するからです。
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