読み終えてすぐに、もう一度読み返しました。こういうことは久々です。
作者の大塚邦明は1948年生まれの九大医学部出身で、現在は東京女子医科大医療センターの内科教授です。
”時間生物学”という分野があって、すべての生物は時計遺伝子を持ち、いくつかのリズム、サイクルに合わせて生きているそうです。
たとえば24時間くらいの概日周期(概が付くのは、日光が全く入らない部屋で実験すると、人間は25時間周期になるからです。)
次に90分リズム。これはレム睡眠とノンレム睡眠の周期としてポピュラーとなりつつあります。
その他8時間、12時間のリズムなどが有る訳ですが、そのコントロールタワーは視床下部にあり、これを親時計と呼びます。
時計遺伝子はからだの細胞の一つ一つにもあり、これを子時計と呼びます。
脳にある親時計の指令に従って、からだの中の数十兆の大部分の子時計が回り、快適な生命活動を営んでいるのだそうです。
学術的な記載も多岐にわたり、興味深く面白かったのですが、それとは別に、私はこの作者の文学性に感動してしまいました。
私は文学を、中学校時代のオヤジからのお下がりである世界文学全集でスタートさせています。旧かな使いで漢字も古い字体でした。
この作者も、おそらくは、そのような旧い文学全集でスタートされているように思えます。
なぜならば、懐かしい漢字や、言い回しが多数認められるからです。
それにしても、その文学的知識の豊富さには驚かされます。
引用された書物を列記してみると、ガリバー旅行記、ギリシャ神話、愛と認識との出発、暗夜行路、万葉集、旧約聖書、古代仏教、荘子、老子、オデッセイア、
風の又三郎、ギリシャ哲学(エピクロス)、となります。
とても医学書とは思えませんね。
作者の文学性が、よく窺い知れる、最後の締めくくりの言葉を、少しだけ簡略化してアップします。
右手を傾げて、機敏に勤しむ、奔る姿が美しい、女性がいた。医療過疎の地域に住む人の健康に尽くしたいと言う。
つつましい笑顔が眩ゆい。その熱い言葉が、著者の胸を打った。その言葉が、それからの著者の35年間を支えてきた。
くしくも、マザー・テレサと同じ、八月二十六日生まれの、今も著者の傍らにいるその人に、ここに改めて、感謝の心を注ぎたい。
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