はせがわクリニック奮闘記

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蓮尾

2014年07月26日 | 昔話
最近父親となった外科の蓮尾は玉名高校始まって以来の秀才と呼ばれていました。
卒業後は東京大学に行くつもりだったのですが両親の反対で断念せざるを得ませんでした。
自宅から通える大学じゃないとダメだと言われたのです。
仕方なく蓮尾は熊本大学の工学部に願書を出そうとしました。
しかし、担任の先生に、 " いくらなんでももったいないから、せめて医学部を受けなさい。 " とアドバイスされます。
結局、熊本大学に2番で入学した蓮尾でしたが、東大への未練を絶ち切れず、翌年受験しようと計画しました。
ところが、同級生との麻雀や飲み方にハマってしまい、ずるずると医者になってしまったのです。

医学部に入ってくる学生は、皆、自分の頭の良さに自信をもっています。
みんなが頭の良い仲間で、上も下も無いと思っています。
ところが、蓮尾だけは別格でした。
同級生たちは、蓮尾を自分たちよりも頭が良い人間だとみなしたのです。
私も、人生で初めて、自分よりも確実に頭が良い人間に遭遇したと思いました。

昔、インベーダーゲームが流行したことがあり、皆ハマってしまいましたが、蓮尾の上達は異様でした。
なんだか訳のわからない攻略法を編み出したのです。
随分後になって雑誌に、" 名古屋打ち " として発表され、全国に知れ渡りますが、蓮尾は自分で発明していたのです。

私は蓮尾から白血病物語という話を聞かされた記憶があります。
白血病と免疫のメカニズムをストーリー仕立てにして理解しようとするもので、ただただ感心させられました。

ただ蓮尾には議論になったら、相手が誰であろうと一歩も引かないという頑固さがありました。
ある日、私の部屋で麻雀をしたのですが、メンツが5人も集まってしまいました。
こういう時には、 " 二抜け " といって、2位に終わった者が、半チャン休むというルールを適用します。
2位になった蓮尾は隣の部屋で私の家内の手料理を味わいながら一杯やっていました。
しばらくして隣の部屋からすすり泣くような声が聞こえてきました。
蓮尾との討論で、言い負かされた家内が悔し泣きをしていたのです。
私は蓮尾に、 " お前は、他人の家でご馳走になりながら、カミさんを泣かすのか? " と言いました。
それでも蓮尾は、" だって間違ってるんですもん。 " と譲りませんでした。

随分昔の話ですが、蓮尾が東京の妹夫婦の部屋を訪ねたことがありました。
その日は慎ちゃんの友達も来ていて早速飲み方が始まりました。
蓮尾は、慎ちゃんたちより3つ年下です。
蓮尾の身長は180cmですが慎ちゃんたちは186cmの大男です。
いつの間にか蓮尾は、 " チビ " と呼び捨てにされ、ビールを持ってこいだのとパシリ扱いになったそうです。
妹も、 " ビールを取りに行く時は、空き瓶を持って行って片づける! " などと指導したそうです。
明け方まで飲んで皆酔いつぶれたそうなのですが、翌朝の10時に、またまたビールで乾杯しようとする慎ちゃんたちに、
" 冗談じゃない、殺されます! " と蓮尾は、ほうほうの体で退散したそうです。
後日、蓮尾は私に、 " 人生でチビと呼ばれたのは、後にも先にも、あの時だけですよ。 " とこぼしていました。

結局医者になってしまった蓮尾ですが、興味はサイエンス全般のようでニュートンなどの科学雑誌が愛読書です。
蓮尾のような優秀な頭脳を医者にしてしまうのは、資源の無駄遣いのように思えます。

しかし、蓮尾に娘ができたことは朗報で、遺伝子がちゃんと橋渡しされました。
そのことで良しとしましょう。

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